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2009/12/19(土)
妖精のおじいさん
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関東に引越してきてから、よくすれ違うホームレスのおじいちゃんがいる。 ちっちゃくてひげもじゃで、動きも目線もなんだか妖怪や妖精みたい。 すれ違う人達も特にそのおじいちゃんが目に映っていないような感じで、 本当に存在する人間なのかと、かなりずっと気になっていた。
たまに空き缶を拾っていたり、たまに近所のゲームソフト屋さんでゲームに興じていたり スーパーの中を白いマスク姿で歩いていたり。
いや、本当に普通なのだ。 でもなんだか、人の言葉を発するようには全く見えないのだ。 アーサー・ラッカムや、エドマンド・デュラックなんかに出てくる妖精みたい。
ところがいつものように私が仕事をしていたときのこと。 そのおじいちゃんが私の目の前を通り過ぎて行くと思ったとき、 どんぐりのような瞳で私に一言投げかけたのだ!
『がんばってねー』
うぉおおお!日本語しゃべったーっ!!! つい私も興奮していたので大声で叫んでしまった。
「おじさんも頑張ってねーっ!」
おじいちゃん、どんぐり目を三日月にして欠けた歯を見せながら どこかへまた行ってしまった。
この寒空の中、あのおじいちゃんはどこで暖を取っているのかな。
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