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2009/09/20(日)
ふらっと立ち寄ったバーで
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・新幹線で列島を横断しているとたくさんの川を越える。
それぞれの川では釣りをしたり、ボートを漕いだり、企業の工場が連なっていたり、堤防で野球をしたり、お弁当を広げたりする人たちがいて、生まれてからずっと川の側で生活をしてきた私は川べりから人は何か生み出していくということを信じ、実感している。
ボーっと車窓を眺めていたらあっという間に目的の駅に着いた。
岡山に着き路線バスでホテルへ。
荷物をおろして街にでる。
夕方。
アーケードにはたくさんの商店があり、ふらっと立ち寄って商品をみる。
お店の人とのやり取りが気兼ねなく出来るのも個人商店ならではでないかと思う。
人の集まるところに行きたいと思い、街を歩いていると駅前に一番人がいる。
この人たちは何処に行くんだろう?
駅のベンチに座って行き交う人たちの足並みを眺めていたら日が暮れてきたので、夕食処を探すためにまた街を歩く。
メインストリートから一つ入ったストリートには飲み屋が連なっている。
威勢のいい飲み屋が多く、少しゆっくり考えたかった私はひっそりとしたバーに入ってみた。
客はいない。
バーテンダーにビールとトマト注文をして、ホテルでもらってきた地図を広げる。
メニューをめくっていくと「1・2・3・4・5」という酒があり、それぞれに名前を付けてほしいという。
色や味、今の気分で名前を付け、それが店のメニューになる。
私は「5」を注文した。
黄色い泡のたっている少し甘い風味。
飲みながら酒をつくるこだわりや思いを語ってくれた。私も自身の制作について話していた。
―「絶対的な答え」をつくらない仕事。
―「形がないものに形を与えていく(その形も次の瞬間に変わる)」仕事。
―「そして夢を与える」仕事。
だと、私の行動に言葉をくれた。
一杯の中に、バーテンダーの想像力と飲む側の想像力がそこには生まれてとても面白い。
私は、自身の作品を見せ、このイメージで一杯つくってくれないかとリクエストした。
今この瞬間生まれた一杯『またたき』。
透明感と水面の泡にこだわったジンベースの強い一杯。
これも作品から生まれた作品だとうれしくなった。
グラスを上から見ていると泡が作品のしぶきと似ていて、ライトにかざすと水面を見上げる水の中の身体感覚が感じられる不思議な一杯。
そんな感想を告げると、バーテンダーも見下ろして、見上げる双方の視点で制作していたことが分かった。
ふらっと立ち寄った店で随分と長居をしてしまい、時計は明日になりそうだった。
歩いてホテルへ向かう。
秋の風が一段と濃くなってきた。
明日は何処へ行こう?
そんな主体が日常に必要だなと。
久しく忘れていた感覚にわくわくしながら枕をつぶした。
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