Zooey's Diary
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2005/05/29(日) 「さくら」
これはなんというジャンルに入れたらいいのでしょう。西加奈子著「さくら」。テーマは家族の愛。平凡で幸せな家族の、崩壊と再生の物語。
実直で仕事ができる父親、美人で陽気な母親、学園のスーパースターで人気者の兄、誰もが振り返る美人の妹、その間に挟まれた平凡で取り柄のない(妹に言わせると「一回見ただけやったら覚えられへん顔」の)「僕」。その次男の目線で話は進められて行きます。
最初のうちは辟易しました。稚拙な文体、凡庸な形容、くどい擬声音、少女漫画風というか子供の作文みたい。ジョン・アービングを彷彿とさせるってこれじゃアービングに失礼だろう!こんなんでどうしてベストセラーに入ったのか?と殆ど怒りを覚えながら読み進んで行ったのですが…やられましたねえ。子供の作文のままで、ぐいぐいと心の中に入り込んでくるのです。
幸せを絵に描いたようだった一家が、兄が事故に遭った辺りから加速度付きで崩壊に突き進んでいく。下半身不随になったことを知った兄が弟妹に向かって「お、俺のん、も、もう、役にた、立たん、ねん。」と泣くシーン。私は、男の人のこんな悲しい独白は聞いたことがありません…。兄の自殺、父の家出、暴飲暴食を繰り返して肥満していく母、引きこもる妹…しかし最後にこの家族は再生するのです。
読後感は非常にすがすがしい。ただ小学館の「セカチュー、今会いに続く名作!」というコピーは勘弁して欲しいですね。1時間50分。

2005/05/22(日) 「ミリオンダラー・ベイビー」
私は軽い気持ちで観に行ったのです。友人に試写会に誘われてラッキー!と。今年のアカデミー賞4部門受賞作でもあるし、見逃すわけにはいかないとばかりに。
ボクサーを目指す女性と老トレーナーとの心の交流を描くスポーツドラマぐらいに思っていました。題名からしてサクセスストーリーかと。こんな悲しい話だとは知らなかった…。観終わった後しばらく立ち上がれないような感じです。
映画としては良く出来た作品だと思います。74歳のクリント・イーストウッドが監督・製作・音楽・主演とこなしていて、もう完全に彼の世界です。で、でもあまりにも悲しすぎる。ネタばれになるので詳しくは書きませんが、何もあんな終わり方しなくても…彼女あんなに頑張ったのに…という思いが拭えないのです。
後味悪いこと限りなし。唯一の救いはモーガン・フリーマンでしょうか。主役二人の友人であり、穴の開いた靴下を履き、おなかの出たランニング姿のボクシング・ジムの雑用係。彼の訥々とした語りで話は進行するのですが、その存在がなかったらこれはもっと救いのない話になっていたのは間違いありません。
「ミリオンダラー・ベイビー」http://www.md-baby.jp/

2005/05/14(土) 「明日の記憶」
しばらく前に朝日新聞で若年性アルツハイマー病の特集をしていました。二組の実在の夫婦が出てきて、一組は夫が、もう一組は妻がその病に侵され、それぞれの伴侶が介護をしているその苦悩ぶりを連載記事にしていたのです。どちらも発症は四十代であったか…。その後書店で同じテーマを扱った荻原浩の「明日の記憶」を見つけたときには、迷いもなく手にとってしまいました。本屋大賞二位を取ったので以前から気になっていたのです(一位は夜のピクニック)。
出版社の作品紹介「知っているはずの言葉がとっさに出てこない。物忘れ、頭痛、不眠、目眩、告げられた病名は若年性アルツハイマー。どんなにメモでポケットを膨らませても確実に失われていく記憶。そして悲しくもほのかな光が見える感動の結末。」
主人公は49歳の広告代理店管理職。その主人公「私」の視点で話は進められていくのです。そんなこと言ったって病気は確実に進行していくのに…いよいよボケてしまったらどうするのだろう、主客の転換をするのだろうかと興味津々で読み始めたのですが…。
冒頭部で物忘れのひどさを自覚した「私」は、「備忘録」と題した日記をつけ始めるのです。最初の頃はどうして自分がこんな病に、という義憤、絶望、悲しみが端正な文章で綴られているのに、日を追うにつれてひらがな、誤字、繰り返しが増えていくのです。これはダニエル・キイスの「アルジャーノンに花束を」と同じ手法ではありますが、日記自体の数が少ない分もっと切ない気がします。そして悲しくも美しい感動のラストシーン。そこまで淡々と読み進んでいったのですが、私は最後のページで号泣してしまいました。重いテーマにしては綺麗にまとまりすぎているきらいはありますが…お勧めの一冊です。決して他人事とは思えない…自分がこんな病気になったらどうしよう… 2時間20分。

2005/05/06(金) 「9月が永遠に続けば」
連休に読んだ数冊の本の中ではこれが断トツの面白さでした。第5回ホラーサスペンス大賞受賞の沼田まほかる「9月が永遠に続けば」。出版社の作品紹介は「最愛の息子が失踪した直後、愛人の男が事故で死んだ。もしかして、息子が殺したのか?…亡霊のように現れる過去の絆。」 この新人、何者?と思ってしまうほど文章がうまい。ホラーサスペンスというものの、人間の心の襞、弱さ、醜さなども書き込んでいる。凄惨な陵辱シーンなどもあり、後味が良いとは言えませんが…。
「閉塞感、そう、まるで柔らかく閉じ込められているかのようなのだ。雪のカーテンの向こう側で本当は世界は消滅していて、雪はただそのことを隠すために白く降り続けている、そんなふうに思えた。見知らぬ場所に立っているような気がした。すると急に、これは雪ではなく死の灰だ、という突拍子もない考えが頭に閃いた。さっき紅茶を飲んでいたときだったかいつだったか、知らないうちに世界の上で巨大な核爆発が起きたのだ。消滅したのは私自身なのか。光も見ず音も聞かないまま一瞬で命を失くし、時空の外に滑り出てしまったのではないか。このどこともしれない不思議な場所で、こうして人生という薄っぺらな錯覚から醒めて、だから、もう、人や、街や、そこで行われる様々なことを信じ続けるふりをしなくてもいい。」
いくつもの事件がつながっていく謎にも引き込まれます。惜しむらくは、語り手であるところの「佐知子」の魅力が乏しい。今ひとつ顔が見えて来ない。せっかく冬子や文彦を生き生きと描写しているのだから、惑い悩む母であり主婦であるこの主人公をもっと魅力的に描いて欲しかったですね。1時間50分。

2005/05/04(水) 「Shall we dance?」
ハリウッド版が日本の原作とどう違うのか楽しみにしていました。といってもこういう娯楽作品はさらっと観てしまうので、日本版も詳細は覚えてないのですが…、覚えてる限りでは見事に原作に忠実でした。リチャード・ギアは昔は好きではなかったのですが、今は良い具合に枯れていい味出しているし。あの個性的な脇役たちも、何処で見つけて来たかと思うほどはまり役だし。ただ、ハリウッド版はあまりにも明朗すぎる気がします。日本版には、全編を通じて「うすら恥ずかしさ」(含羞と言ってもよいのですが)というものが付きまとっていた気がする。中年のサラリーマンが社交ダンスを始めることの恥ずかしさ。ちょっといかがわしいような雑居ビルの中のダンス教室に行くことの恥ずかしさ。小さな建売住宅の中で夫婦で踊ることの恥ずかしさ。場末のダンスホールのような所のパーティに行くことの恥ずかしさ。そしてそういった恥ずかしさの中でも(あるいはその中だからこそ)、草刈民代は凛として、美しかった。ボリュームがありすぎるジェニファー・ロペスよりも格段に品があって優雅だったように思うのです。まあこの辺は好き好きでしょうが…。
「Shall we dance?」 http://www.shallwedance-movie.jp/

2005/05/03(火) 根津神社のツツジ
素晴らしくお天気の良い連休です。といっても、夫の休みはカレンダー通りだし息子たちはそれぞれ忙しくて、私はたまった雑事を片付けたり楽しみに取っておいた本を読んだり、というたいして変わり映えのない日々を過ごしています。普段と変わったことと言えばせいぜいツツジを愛でながら都心を散歩したり、美味しいものを食べに行ったことぐらいでしょうか。根津神社というのは夫の母校のすぐ裏手にあるので、私は遥か昔に行ったことがあるのですが…今回二十年ぶり位に行って驚きました。ツツジの咲き誇る様は相変わらず綺麗で、箱根の「山のホテル」のようですが…物凄い人、なのです。境内に入る辺りからデパートのセール会場みたい。昔はこんなに混んでなかったのに…連休中に行くということが無謀だったのでしょうか。そういえば、例えば千鳥ヶ淵の桜なんかも私はとても好きだったのですが、数年前に知り合いのアメリカ人を案内して驚きました。九段下で地下鉄を降りる辺りからもう行列なのです。行った日が悪かったのか?でも、以前はここまで混んでなかったような気がします…ぶつぶつ。


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