ロバの耳
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2005/09/03(土) 俳句・「ユリイカ 三十句」「鹿嶋神社祭礼 三十句」関悦史
 昨日HPにアップされた関氏の作品。

http://etusinoheya.hp.infoseek.co.jp/works/haiku.html

 個人的には「ユリイカ」よりも「鹿嶋〜」の方が好きです。

「ユリイカ」で気に入った句。

黒揚羽陸地は動きゐたるなり
彗星軌道に雑巾かかる秋の水

 ユリイカは各句に天文・物理・数学に関する単語が使われていますが、けれんなくぴたっとはまっている句が少ない。もちろん、そのけれんがいい、という人もいると思いますが。

 黒揚羽の句は、ひらひらと飛ぶ蝶の姿、それも黒揚羽という景色の中にはっきりとした姿を現しつつ影であるという不思議な存在と、陸地という私たちの居住空間でありながら普段は認識の外にある存在のゆっくりとした動きの対比が妙。

 彗星の句は、彗星軌道という天空における一筋の壮大な軌跡に濡れた雑巾をかけるというその下世話さと壮大さのミスマッチが逆にうまくマッチしています。手前に水のしたたる雑巾、その向こうに見える銀河。日常から遠くはあるが、確かな延長に宇宙があるという認識。

「鹿嶋神社祭礼」で気に入った句。

急坂を人手離れて山車のぼる
店の車どこへ回せど山車塞がる
山車引いてみな野暮つたき伊達をとこ
携帯電話かけるついでの山車引くや
カンカン帽のホイッスルに山車われらへ向く
眼前に山車鳴る世間話かな

 「山車」が詠まれた句はみんないいです。祭のスナップ・ショットの連続のよう。もちろん、もっとたくさんのシーンが撮られた上での厳選された一つ一つ。

 特に好きなのは「眼前に〜」の句。山車は祭の象徴で、その一言が祭のにぎやかさ、華やかさを現しています。その山車が目の前にありつつかわされる世間話。ハレである祭とケである日常との交差。祭は日常を犯そうとして犯しきれず、相対しても存在し続けているという、当たり前すぎる奇妙な光景です。

 「山車」以外の句で好きな句。

町は轟音氷屋の犬土間に眠り
すぐ前に立つヤンママの背が裸
会ひたき人以外とは逢ふ祭かな
祭り果て麦酒臭あるただの闇

 「町〜」も前述の「眼前」と同じ感覚。ただし犬の日常には人間たちのばか騒ぎなど関係ない。人よりも祭にもっとずっと距離を置く(いや、距離というより別次元なのかもしれない)、氷屋の犬の無関心な静けさ。
 「ヤンママの背」や「会ひたき人」、「祭り果て」は思わずうなずいてしまう既視性があります。特に「祭り果て」はわかる。祭のあとの静けさはただの闇。しかしビールのあの醜悪な香り(苦く安っぽく、かつ気の抜けた炭酸のまずさを想起する)は強く残っている。恥も外聞もなく騒いだ後、何もなかったような顔をしても、どうしても残る後味。

 どれも的はずれで作者の意図とは外れている感想かもしれませんが、思ったままを素直に書かせて頂きました。関先生にはすみません。


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