ロバの耳
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2005/09/19(月) 本・『ローマ人の物語〜悪名高き皇帝たち』塩野七生 新潮文庫
 文庫本四冊です。17〜20。実はまだ、20を読みきってはいません。

 17から18巻の半分までが2代目皇帝ティベリウスの話。この方は知名度としては一般的に地味ですが、アウグストゥスから帝国を引き継いで、その地盤固めをした人です。真面目でしたが真面目ゆえに人に疲れるタイプだったらしく、晩年の十年はカプリ島に引っ込んで統治をします。とにかくこの人のおかげで帝国は盤石になります。

 18巻の後半はカリグラ。これは実はあだなで、ガイウス・カエサルが本名です。カリグラとは子供用の小さな軍靴のことで、彼が小さな頃、軍のマスコット的存在だった時についたあだなだそうです。

 若き皇帝は民衆からも元老院からも大歓迎されて即位しました。ティベリウスが厳しい緊縮政策をしたので、それと反対に派手なことをする彼は喜ばれたのです。彼は人気取りのためもあって大変な散財をします。しかし、やがては飽きられて、信頼していた部下に殺されてしまいます。たった四年間の統治でした。

 四代目に皇帝の座についたのは、クラウディウス。彼はその時すでに五十を超えていて、それまでを歴史家して生きていました。まさか自分にお鉢がまわってくるとは思っていなかったのです。
 彼は学問の人だったので、政治家としてのキャリアはなかったのですが、自分が学んできた歴史をその手本としてカリグラが傾けた国家財政の建て直しをしました。彼の欠点は妻に頭があがらなかったことで、好き勝手した前妻メッサリーナや、再婚したネロの母親アグリッピーナにふりまわされ、最後には殺されてしまいます。つくづく女性って自分の欲望に忠実な恐ろしい生き物だと思います。

 で、今読んでいる20巻が暴君として名高いネロの話。彼はセネカという当代きっての学者と、優秀な武人を母親にあてがわれ、序盤はまずまずの政治をします。しかし、小うるさく口出しをしてくる母親を殺害した辺りからその行状が怪しくなってきます。

 ローマの皇帝というのは絶対の権力者であった中国の皇帝とは違って、共和制を建前として、元老院や民衆に選ばれる「第一人者」でした。つまり、高度に政治的なバランスを取る能力を要求されたのです。
 カエサルもアウグストゥスもその道の達人だったのですが、以後はそんな人が現れず、ついには血縁による帝政は五代で途絶えてしまいました。

 カエサルやアウグストゥスの章を読んでいた時はまさに英雄談を読んでいるようでしたが、今回の四冊は普通の人が悪戦苦闘する物語。
 地味で真面目なゆえの不人気、若さゆえの派手さと浅慮、学者肌ゆえのおしだしの弱さ、勝ち気で押しつけがましい母親との葛藤……。伝説の暴君はそこにはおらず、ひどく身近な人々の苦労が見え隠れして、面白かったです。


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