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2005/08/28(日)
本・「ある殺意」P.D.ジェイムス/青木久恵訳 ハヤカワ
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ある秋の晩、ロンドンのスティーン診療所の地下室で、事務長のボーラムの死体が発見された。彼女は心臓をノミで一突きされ、木彫りの人形を胸に乗せて横たわっていた。ダルグリッシュ警視が調べると、死亡推定時に、建物に出入りした者はなく、容疑者は内部の者に限定された。尋問の結果、ダルグリッシュはある人物の犯行と確信するが、事件は意外な展開を……現代ミステリ界の頂点に立つ著者の初期の意欲作。改訳決定版。 (文庫カバー裏より)
1963年の作品。デビュー作「女の顔を覆え」に続く長編第二作目だそうです。文庫化が他の作品よりもずいぶん後回しにされました。 P.D.ジェイムスにしては珍しい、容疑者の限定される空間で殺人事件が起こって尋問が行われ、最後に意外な真犯人という古典的なスタイル。そのせいかどうかはわかりませんが、いつもの彼女の作品を読む時に感じるその文体の魅力はほとんど感じられず、読んではやめ読んではやめと、なかなかその世界に没頭できませんでした。中盤から後半にかけては一気に読み通しましたが。
正直、感想は「もの足りない」と言った感じ。作者が自分のスタイルを完全に構築する前の実験作というか、この方向性で進まずに良かったと思うような作品です。そもそも私が彼女の作品に求めるものは「犯人は誰なのか?」という興味よりも、「この小説が終わらずにいつまでも続いて欲しい」と思わせるような仮想現実の世界への誘いなのです。
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