ロバの耳
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2005/08/24(水) ドラマ・「名探偵ポアロ・第九シーズン」
 ロンドン・ウィークエンド・テレビジョンが89年から放送しているシリーズ。ポアロ役はデイヴィッド・スーシェ。吹き替えは熊倉一雄。

 第九シーズンは2003〜04に制作された、『五匹の子豚』『杉の棺』『ナイルに死す』『ホロー荘の殺人』の四作です。昨日『ナイルに死す』、本日『杉の棺』が放映されました。明日は『五匹の子豚』、明後日に『ホロー荘の殺人』が予定されています。

 この放映順、ドラマ制作順とは違っているのですが、(先に並べた順序が制作順)、実は原作が発表された順になっています。『ナイルに死す』が1937、『杉の棺』が1940、『五匹の子豚』が1942、『ホロー荘の殺人』が1946。ちょうど第二次大戦期と重なっていますね。ドラマ中でもしきりとドイツでのナチの話題が口にされています。

 この四作品中、原作は『ホロー荘の殺人』以外は読んだことがあるのですが、今回、ドラマを見て、クリスティーのプロットの複雑さには頭が下がる思いがしました。見かけ上のストーリーの内部に様々な真実や隠されたストーリーが動いているのです。彼女はよほどの夢想家か、大うそつきだったに違いありません。

 私は日本のミステリの中で、坂口安吾の『不連続殺人事件』という作品が大好きなのですが、この作品をかの横溝正史は「アガサ・クリスティーのABC殺人事件の複数化である」と連載途中で見破ったと『真説・金田一耕助』の中で書いています。

 なるほど、動機という面において確かに『不連続』は『ABC』の複数化です。しかし、今までこのことに言及している文章は見たことがないのですが(はっきりしすぎていて誰も言わないだけかもしれませんが)、今回の『ナイルに死す』のドラマを見て、今更のように『ナイル』からも『不連続』は多大な影響を受けていることに気がつきました。多くは語りませんが、ある設定がそのままそっくり同じなのです。

 つまり坂口安吾は『ABC』と『ナイル』をミックスして『不連続』を生み出しているのです。坂口安吾は、よほどクリスティー作品に傾倒していたのでしょう。

 自分にはとても考えつけそうにない、男女の愛憎劇とお金の絡んだ犯罪物語。明日と明後日の残る二作品も楽しみです。


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