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2005/07/10(日)
本・「銭形平次捕物控(一二)狐の嫁入 野村胡堂
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この巻はこれまでの中でも面白い作品が揃った巻でした。面白いというか、私好みと言った方がいいのかもしれませんが。
表題作「狐の嫁入」は、かつて住んでいたこともある北区近辺の話。小雨のしょぼつく晩に提灯行列が現れるという怪異の裏に企まれる事件を平次の慧眼が見抜きます。
「北冥の魚」は暗号もの。「日々魚」という謎の言葉から遺産の隠し場所を解き明かすという話で、これはなかなか凝っています。この暗号は漢学に明るい人でないと読み解けない?(平次も上役の笹野様に聞きにいきましたし)
「二階の娘」はなんとなくドイルのホームズ譚を思わせる話。湯島天神のお参り帰りに、民家の二階の縁側から、昼間だというのに灯の入った行灯がぶらさげてあるのを見つけた八五郎。なんのまじないかとしばらく日参してみると、それが赤い鼻緒の草履、麻糸・細い紐・かもじと変わります。実はそれは二階に監禁されていた娘のメッセージで……。
「白紙の恐怖」は大店の主人の元に毎月決まった日に白紙の手紙が送られてくるという謎物。送られてくる日は前の主人の命日で、前の主人は大名から預かった一品をなくしたために詰め腹を切らされたという非業の死を遂げています。はたして白紙の手紙の意味は……?
人殺しが起きて、限られた容疑者の中から犯人を見つけるというのは全てにおいて共通するパターンなのですが、やはり面白く読めるのは一見すると殺人とは関係のなさそうな奇妙な出来事が発端となっている話です。
作者・胡堂も当然影響を受けているドイルの作品でも、読者からの人気があるのは殺人事件を扱ったものというより、そういう奇妙というか風変わりな出来事を扱った作品です。例えば「赤毛連盟」とか「唇のねじれた男」とか。
暗号解読ものも好きです。現代みたいに暗号技術が高度に複雑化された社会では、小説の中に出てくる暗号なんて実に稚拙なものなのですが。それでもやっぱり面白いですね。
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