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2005/05/16(月)
DVD・『悪霊島』監督/篠田正浩
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久しぶりに見たくなったので見てしまいました。 去年の4月に買ったんです。サウンド・リニューアルエディション。好きな映画でしたので。 版権の関係でビートルズの「LET IT BE」「GET BACK」が別音源に差し替えられています。この映画のCMで流れていたのが初めて聴いた「LET IT BE」でした。映像の雰囲気から恐い曲だというイメージを持ってしまったものです。この映画にはやっぱりオリジナル曲のじゃないと……という人も少なからずいるとは思うのですが、私は許容範囲です。最初と最後に流れるだけですしね。
「「あの島には悪霊がとりついている。悪霊が。鵺の泣(ママ)く夜には気をつけろ……」男が謎めいた言葉を残して逝った。そして恐怖の惨劇の幕があいた……。 アメリカ帰りの億万長者から、尋ね人の依頼を受けて、岡山を訪れた金田一耕助、旧知の磯川警部と出会い、目的の人物らしい男が怪死したことを知る。真相を究明すべく、謎を秘めた刑部島に渡る金田一。そこで出会ったのは、神々しいばかりに美しい女性、巴御寮人。そして蝶のように美しさを競う姉妹、真帆に片帆だった。その金田一の前で繰り広げられる第二、第三の惨劇……」 (DVDの箱書きより)
金田一耕助映画といえば市川昆ということになり、金田一役者といえば石坂浩二ということになるのでしょうが、私はこの「悪霊島」が一番好きで、金田一といえば鹿賀丈史です。鹿賀さんはこの一本でしか金田一をやっていないんですけれどね。ご本人も言ってますが、金田一というのは探偵なんですが、傍観者なんです。ストーリー上でも主人公ではなく、第三者。だから殺人もくい止められない。次々と起きる惨劇をただ眺めているだけ。そういうポジションを鹿賀さんは実に忠実にやっています。だからとても飄々としていてクールなんですね。実は。鹿賀金田一は惨劇に対して怒りもしなければ悲しみもしないんです。感情的にならない。そこがいいんです。
また、映画としての「悪霊島」は、謎解きや結末はともかくとして展開と映像がとても良いのです。ミステリ好きのカタルシスを満足させてくれる展開なんですね。ちょっと怪奇趣味な謎が次々と提示されて、登場人物たちが意味深な言動をしてくれる。それに金田一が軽く合いの手を入れていく。映像も市川作品と違ってわびさびがあります。市川作品はあれで結構派手なんです。色使いや光の明暗が。レンブラント的なタッチとでもいいましょうか。光と影で対象をくっきりと浮かび上がらせる。そこに血の赤や金色なんかを入れるんですね。篠田監督はそうじゃないんです。設定が1969年なんですが、昔のドラマのような色遣いといいますか、子供の頃に見たような映像の懐かしさがあるんです。さらに血が飛ぶシーンような演出は一つもない。お化け屋敷の恐さでない、情緒面での勝負みたいなことを意識している気がするんですね。まぁ、今見ると、死体のメイクなんかは少しちゃちですけれど。 役者さんは随分亡くなられた方がいらっしゃいます。これは時間が経てば当然のことなんですが。古尾谷雅人とか、伊丹十三とか……。生きてらっしゃる方もみんな若いですよ。岸本加世子、中尾彬、石橋蓮司、岩下志麻……。中尾さんなんて元金田一役者で、それがこの映画では殺される役なんですから、皮肉なものです。
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