ロバの耳
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2005/02/15(火) 落語・『夢金』十代目金原亭馬生
 なんど聞いても馬生の方が、父・志ん生に語り口が似ていると思うんですけれどねぇ。

 『夢金』は夢オチの噺。

 金が好きで好きでしょうがない船頭の熊蔵。寝言でも「百両〜!」なんて叫んでいる始末。寝ているところを起こされて、酒代ははずむからとわけありの男女を船に乗せることになります。
 実はこの男、大金を持っている娘を殺して金を奪おうと考えている極悪人。大川の途中まで来たところで、娘を殺して金を山分けしようと熊蔵にもちかけます。
 熊蔵はしぶしぶ引き受けるふりをし、中洲に船をつけて男を先におろしたところで素早く舟を出し、男を置き去りにしてしまいます。そして娘を家におくりとどけ、事情を話すと下へも置かないもてなし。莫大もない謝礼をもらいますが……。

 弟子だった五街道雲助が、馬生についてHPでいろいろ語っています。

「金原亭馬生と云うと繊細、緻密な芸の様に思われていますけど、弟子の目から見るとまるであべこべでしたですね。どんな大根多でも、又久しぶりにかける根多でも余り復習わずにかけてしまいます。まだ目黒に寄席があった頃師匠の真打で、楽屋で「何をやろうかなぁ」と考えている内に上がりの時間になりました。楽屋が地下でしたから、階段を上がりながら「うーん、そうだ、ちょうじちょうじ」と言いながら高座でいきなり「名人長二」を始めたのには驚きました。確かその日から何日か連続でかけました。その高座度胸には度々驚かされました」

「高座度胸が良い分、噺は大雑把なところがありました。言い間違いはのべつでした。もっとも有名なのに金亀の間違いというのがあります。ラジオで「子別れ」を演った時に、子供の名前が始め金坊だったのがいつの間にか亀に変わり、その後又金坊になり亀になりで訳が分からなくなっちゃった。その後この放送を聴いた方から「子供の名前が何度か変わりましたが・・」と師匠に直接電話がありました。ところがあたしの師匠は絶対に間違えたとは言いませんでした。「いえ、あれでいいんです。昔は子供の事を総じて金坊と言ったもので決して間違いではありません」そんな馬鹿なことはないけれど相手をそれで納得させてしまったのが凄い」

「この手の噺には事欠きません。紀ノ国屋寄席で「金明竹」を出しましたけど、やはり復習わずに高座に上がりました。「金明竹」の様な言い立てのある噺を復習わずに上がるなんて事はあたしらにはとても真似できません。案の定言い立てが「うーん」「それで・・」「でこのー」という訳の分からない接続語の連続になりました。二度目三度目の言い立ても、ハナはすらっと出て今度は大丈夫かなと思うと、又「うーん」となる。それでもどうやら終えたんですけど、当時紀ノ国屋寄席には「お尋ねします、お答えします」というコーナーがあって丁度師匠の番でした。客に質問を取ったところ「今の言い立てが三度とも違いましたが・・」てぇのが出た。あたしならすぐに謝っちゃうとこですけど、師匠はまるで驚かない。「エーあれは、昔名人と言われた圓喬と云う噺家が、あれだけ長い口上を三度とも同じに言える訳がないと、三度とも言い立てを替えました。あたしもそれに倣ったんです」と言ったらお客が「ほーっ」と納得しちゃったんですけど。不思議な説得力がありましたですねぇ」

 昔の名人上手はさすが一筋縄ではいかない強者ばかりです。


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