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2005/12/13(火)
本・「ローマ人の物語23 危機と克服[下]塩野七生
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「このデリケートなシステムの運用当事者たちを私なりに分類すれば、次のようになる。一、ローマ皇帝とは、ローマ市民中の第一人者にすぎないと信じていた──統治前半のティベリウス、全治性を通じてクラウディウス、そしてティトゥス。二、信じてはいないが、信じているフリはした──治世の全期間を通じてアウグストゥス。そして、ヴェスパシアヌス。三、信じてもいず、信ずるフリもしなかった──統治後半のティベリウス、そして、ドミティアヌス」(本文より)
「ヴェスパシアヌスの長男として皇位に就いたティトゥスは誠実を身上とし、ヴェスヴィオ山の噴火によるポンペイの全滅、そして首都ローマの火災という惨事にも対策を怠らなかった。しかし、不運にも病に倒れ、その治世は短命に終わる。続いて皇帝となった弟ドミティアヌスは、死後「記録抹殺形」に処せられる。帝国の統治システムを強化し、安全保障にも尽力したにもかかわらず、なぜ市民や元老員からの憎悪の対象になったのか」(カバー折り返しより)
下巻にずいぶん時間がかかってしまいました。まだまだ読みたい本は山積み状態だというのに。
理由はやはり、内容が退屈だったから、でしょう。今回のほとんどのページを割かれて書かれているドミティアヌスは、「記録抹殺形」を受けただけあって資料が少なく、作者もいまいち人物の掘り下げが出来なかったのではないでしょうか。主に業績の羅列になってしまって、確かにそれに対する歴史的、個人的評価を語ってはいますが、いまいちこれまでの皇帝たちの記述よりもドミティアヌスという人間にせまっていく感じがしない。帯には「元老院から報復」で暗殺されたかのようなことが書いてあるのに、その死に方もいまいち劇的ではなく、実際は家庭内の不和に端を発していた様子。
皇帝となって一年半で病死した兄・ティトゥスはポンペイの悲劇の描写もあってなかなか面白かったのですが、その十倍の期間皇帝であったドミティアヌスの項はかなり退屈でした。
ところで本書の最後には、ハドリアヌスまでのショートリリーフとして五賢帝の一人目として数えられるネルヴァも登場するのですが、この人の在位も一年半と短い。そしてやったことと言えば、ハドリアヌスを跡継ぎとして指名したということだけ。
高校時代、世界史で必死に覚えた五賢帝の、最初の皇帝がその程度の人でしかなかったことを今回初めて知って、もの凄くショックでした。
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