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2004/09/28(火)
『文七元結 その2』 五代目林家正蔵
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さて、昨日の続きであります。
御店に戻った文七は、旦那と番頭にこれこの通りいただいてまいりましたと長兵衛からもらった五十両を差し出します。ところがそれを見た旦那が首をかしげ、 「これはおかしい。実はおまえが先方で碁に夢中になり、そろそろ門限と言われて慌てて飛び出した後、五十金入りの財布を忘れているのに気がついて、先方がわざわざ届けてくださった。お金は先について、おまえはまだ戻らない。これはいけない了見でも起こしたんじゃないかと、今人をやって捜させようとしていたところだったのだよ。それがどういうことだい。すでにここにある五十金と、おまえがもってた五十金、合わせて百金になっちまった。これはいったいどういうことなのか、ちゃんと説明してごらん」 言われて文七は真っ青に。「このままでは娘が女郎になる」と、それまでのいきさつを旦那に全てうち明けます。旦那は長兵衛の行動にいたく感動して、遊郭の名、娘の名などいくつかの手がかりから長兵衛の住まいを探し出し、文七ともどもお礼に参ります。 文七宅では長兵衛と女房とが喧嘩の真っ最中。これこれこういうわけだと説明する長兵衛に、人の命を助けてお金をあげたなど作り話、どうせまたばくちにつかっちまったんだろうという女房。そこへ旦那と文七が顔を出し、いきさつを説明。五十両の金とお久は無事に長兵衛の元に戻り、これが縁となった文七とお久は夫婦になります。
怪談や人情話が得意といわれただけあって、まだしっかりとした語り口の頃の録音、志ん生のように笑わせるというよりは話をじっくりと聞かせてくれるタイプの名人です。 正蔵の名は今度6代目をこぶ平が継ぐようですが、ちょっと落差が激しいですね。こぶ平の古典も何度か聴いたことがありますが、キャラの演じわけもできていませんし、『新聞記事』をやったときなど冒頭のセリフをとり違えてその場で頭を下げ、初めからやり直す始末。最近のお客は実に寛容で(友人のSは別ですが)、笑って拍手など送っていましたが、お金を取って見せる芸とは思えません。こぶ平としてよもやま話をしているぶんにはまだ良いと思うのですが、正蔵としてしっかり古典をやるというのなら、まだまだ修行が足りないのではないでしょうか。
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