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2004/07/07(水)
『モンマルトルのメグレ』 ジョルジュ・シムノン 河出文庫
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ここ三日ばかりの暑さで完全にグロッキー状態、PCにもろくにむかえなかったのですが、その代わりシムノンを読みました。 シムノンは昔はあまり好きではなくて、ここ数年気に入って少しずつ読んでいる作家です。(食べ物でいうとワサビとかアスパラガスとかそら豆がそんな感じでしょうか)大変な多作家で200冊以上の小説を書き、メグレものはうち88冊あるとのことです。 早朝、ホステス兼踊り子のアルレットが、かなり酔った状態で「店で伯爵夫人殺害の相談をしている客の会話を聞いた」と警察に通報します。しかし、彼女は酔いから冷めていくと自分の証言を否定しはじめ、逃げるように家に帰ってしまう。そして自宅で絞殺死体となって発見されます。やがて同じ手口で殺された伯爵夫人も発見されて、メグレはアルレットが残していったわずかな言葉を頼りに事件を捜査していきます。 シムノンの書いたミステリはこの作品にかぎらず、謎解きを期待するものではありません。では読みどころはどこにあるかというと、アルレット、伯爵夫人、酒場「ピカレット」の人々、警官たち、そして犯人など、登場人物の人物造形です。シムノンのミステリは、殺人事件の謎を解くことよりも、一人一人の人間というものの謎に興味の対象をおいているような、そんな感じのミステリなのです。
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