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2004/06/20(日)
『あしながおじさん』ウェブスター 角川文庫
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なぜいまさら私が古典的名作『あしながおじさん』を手にとったりしたのかと申しますと、もちろん、純粋に読んで面白かろうということもありましたが、真の動機には最近良く読むヒラリー・ウォーが関係しています。 私が最初に読んだウォー作品は『事件当夜は雨』でしたが、その書評を書かれている杉江松恋氏はこんな説を唱えていらっしゃいました。 「ウォーの代表作『失踪当時の服装は』は、裏『あしながおじさん』である」 私が『失踪当時の服装は』を読んだ直後の印象は、大好きなコリン・デクスターの『キドリントンから消えた娘』との類似性(当然ながら、影響を受けたであろう方はデクスター。そのことには故・瀬戸川武資氏が『夜明けの悪魔』で触れていらっしゃるそうです)でした。 その二作品の源泉であると聞いては、かなり前(それもそうとう前)に子供向けのリライトかなにかでしか読んでいない『あしながおじさん』の原作を、ちゃんと読んでおかずにはいられなくなったのも当然のことでしょう。 そして実際に読んでみて……杉江氏の説には一応、なるほどと思いました。そういう読み方も確かにあるな、と。しかしそれよりも私は、すでに読み進めている間から、この作品にかなりの影響をうけているであろう別の作品のことを考えずにはいられませんでした。 それは、いまや世界中を席巻している『ハリー・ポッター』シリーズです。私は『ハリー・ポッター』が、主人公を低年齢化させ、男女の性別を変え、ファンタジィという味付けをした『あしながおじさん』であると言ってもいいすぎではない気がしました。 もちろん、だからといって『ハリー〜』シリーズをとやかく言うつもりはありません。『あしながおじさんは』すでに様々な作品にすでに多くの影響を与えてきたのでありましょうし、当の『あしながおじさん』自体が、シンデレラ・ストーリーという黄金律を内包しているのですから。
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