ロバの耳
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2004/12/25(土) 本・『七人のおば』パット・マガー/大村美根子訳創元推理文庫
 ついに読むものを切らしてしまって、寝る前に読むための何か軽くて楽しいミステリはなかったかなぁ……と本棚を見ていたら、ふと『七人のおば』が目に止まりました。

 どんな話だったかとあらすじに目を通すと、「新妻サリーに友人から『あなたのおばさんが夫を毒殺し、自分も自殺してしまった』という内容の手紙が届いた。ところが慌て者の友人は、七人いるおばのうち、どのおばがしたことなのか名前を書いていなかった。気になって眠れないという妻に、夫ピーターはおばたちの話をさせ、どのおばがしたことなのかを推理し始める」というもの。

 そんなあらすじを見ても詳しい内容を思い出せず、うん、面白そうだから再読してみよう、と本を手にベッドへ。ところがこれが軽くて楽しいミステリどころかドロドロの愛憎劇。昼メロ(見たことないけど)にでも仕立てれば、世の奥様連中にはオオウケなのではないかという内容でした。

 七人のおばたちにはそれぞれ実に個性的でかっちりとしたキャラふりがされています。

 長女のクララはしきり屋で独善的。妹たちを自分の支配下に置き、自分の価値観(女の幸せは結婚にアリ)を押しつけ、反抗を許しません。

 次女のテッシーはお堅い女性教師。ひっつめ髪で学問に没頭する、婚期を逃した(当時としては)独り者。これが若くてハンサムなスポーツ青年バートとの恋に溺れることになります。

 三女のアグネスは最初の結婚に失敗、再婚をしますが、その再婚相手はクララがテッシーのためにお膳立てしたスティーブ。最初の結婚で生まれた子供への過剰な溺愛ぶりに、ジョージと始終衝突しています。

 四女のイーディスはキッチンドリンカー。嫁ぎ先のお母さんとそりが合わず、そのために酒に溺れてアル中に。サナトリウムと実家と嫁ぎ先を行き来する毎日です。

 五女のモリーは大変な美女なのですが男性恐怖症。ようやく好意らしきものをもった相手トムと、クララに強引に結婚させられてしまいますが、夫婦の営みを拒絶し続けます。

 六女のドリス。彼女はこの話の核とも言える人物なのですが、情熱的でかつ多情。テッシーの婚約者であったバートと結婚式の前日に激しい恋に落ちます。クララの妨害で結局バートはテッシーと結婚。ドリスはマイクルと結婚しますが、バートとの駆け落ちを邪魔した夫マイクルを憎み続け、結局はバートとの間に子供まで作ってしまいます。その後もモリーの夫トムと関係をもったり、七女のジュディの夫と関係をもったりという多情ぶりです。

 七女のジュディの好みはハンサムな二枚目よりもお金持ち。結婚相手は自分に気前よく贈り物をしてくれた年上のジョージを選びます。しかし、ジュディの大変な浪費ぶりに家計はあっという間に火の車。それでもジュディは自分の欲しいものをねだり続け、ジョージがそれを聞き入れないと彼を罵倒し続けます。

 まさに「七つの大罪」といったところ。この七人の女性のうち、誰が自分の夫を毒殺したのか。冷静、かつ客観的に読んでいくと、おおよそ犯人と動機に見当はつきます。
 ただ、この七人のおばたちが織りなす愛憎劇にのめり込んでしまうと、その単純かつ明快な真相をつい見逃してしまうということもあるでしょう。作者の狙いは恐らくそこにあります。
 それにしても、このドロドロの愛憎劇の合間合間に挟まれる、甘くて幸せな新婚生活を送っているサリーとピーターの会話のなんと可愛らしいこと。この二人が話を進行していくからこそ、重くて暗い話でも読む気がそがれないのですね。二人はこの物語の主題である「不幸な結婚」というものへのアンチテーゼというかほろーというか。その辺も作者の計算でしょう。

 余談ですが、この本の間から大学の図書館の開館日案内が出てきました。なんと懐かしい……。


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