ロバの耳
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2004/12/23(木) 本・『待ちうける影』ヒラリ・ウォー/法村里絵訳創元推理文庫
 精神病院に収容され、9年後の今退院を認められた婦女暴行殺人犯エリオット。彼に妻を殺され、再婚してようやく安らぎを取り戻しはじめた高校教師マードックを新たな不安が襲う。エリオットは彼への復讐を企てているのか? 動こうとしない警察。ふたりを記事に仕立て、名声を狙う新聞記者コールズ。孤立無援の中、家族を護るため苦闘する男の、恐怖の45日間を描くサスペンス!
(文庫カバー裏より)

 ずいぶん前に買った本なのですが、読み終えるまで長いことかかってしまいました。
 理由は、内容が好みではなかったから。では、どうしてこの本を買ったのかというと、作者がヒラリー・ウォーだったからです。少し前にヒラリー・ウォーにはまったということは書きましたが、その時まとめて購入したのでした。

 もともとヒラリー・ウォーにはまったのは、しっかりして落ち着いた警察捜査描写に好感を持ったためだったのですが、本書はそういう種類の内容ではないんですね。主人公は異常者からの復讐に脅える高校教師。彼は職場でも信念を曲げないことで上司である校長に睨まれ、生徒たちからはうざったいヤツと思われている、非常に孤立した存在として書かれています。そんな彼の唯一の救いである美しい妻に可愛らしい二人の娘が危険にさらされるのですから、これはなかなかに読み辛い。

 しかし、ヒラリー・ウォーのうまいと思うところは……というか、読者に満足感を与えるのがうまい作家には共通していえる点なのですが……物語が始まった時点では主人公をとりまいているマイナス面が、後半では次々とプラスに転じていくところなんですね。
 例えば。本書で一番、感激してしまったシーンなのですが、彼が必死になってちゃんとした言葉、文章、読解力を身に付けるように説得して嫌がられたり、校長の方針に反して落第させたりした不良たちが、いざ、主人公の危機が確定した瞬間に、こぞって彼を護ろうとするんです。それまでは彼に悪態しかつかず、彼自身、自分の指導に自信を持てなくなっているという状況で、生徒たちは実はその彼の自分たちに向けてくれてる情熱を理解していて、いざという時に彼を支えようとするんですね。
 そういうネガ・ポジを反転させるようなテクニックは、ぜひとも参考にしなければ、と思います。


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