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2004/12/18(土)
本・ローマ人の物語16『パクス・ロマーナ(下)』塩野七生 新潮文庫
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ローマ世界に平和をもたらし、繁栄の礎を築いたアウグストゥスを、人々は「国家の父」と呼ぶようになる。しかしその彼にも大きな悩みがあった。後継者を誰にするか──妻リヴィアの連れ子ティベリウスは偉大なる父に反発して一方的に引退。娘ユリアの息子たちに期待をつないだものの、いずれも若くして死んでしまう。カエサルの構想した帝政は果たしてローマに根付くのか。アウグストゥスの「戦い」は続く。 (文庫本折り返しより)
カエサルからその才能を見いだされて後継者として指名されたという経緯を持つアウグストゥスでしたが、自分の後継者には自分の血が流れていることに固執しました。 後継としての才覚をもっとも持ち合わせていたティベリウスの引退も、彼に自分の血が流れていないということゆえの確執に端を発したものだったのです。
しかし、老いてゆくアウグストゥスの焦りをよそに、自分の血を引いた者たちは若くして死に、またはスキャンダルを起こして追放せざるをえないという状況に陥るのでした。(彼は姦通罪という法律を自分で強引に成立させた経緯があったので、スキャンダルを起こした身内にも・・・いえ、身内だからこそ、厳しい処分をせざるをえなかったのです)
結局は、突如起こったゲルマンの反乱を鎮圧する必要性にかられてティベリウスに復帰を請い、彼を正式な後継者、二代皇帝とするための手続きを踏みます。
それでもアウグストゥスの妄執はやみませんでした。姪の息子でティベリウスの養子にしていたゲルマニクスに、直系の孫では唯一問題を起こさずに育っていたアグリッピーナを嫁がせるのです。 ゲルマニクスとアグリッピーナははとこ同士。遺伝学的な問題には詳しくありませんが、近親者同士の結婚には暗い予感がつきまといます。 実際、この二人から生まれた子供が後に三代目皇帝・暴君の名をほしいままにしたカリグラとなり、そのカリグラの妹の腹からは五代目皇帝となるネロが誕生することになるのです。
それでも、アウグストゥスは、強い責任感と地道な持続力で帝国の礎を築き上げました。そして七十七歳でこの世を去ります。 次巻からは新章『悪名高き皇帝たち』が始まるのですが、文庫化はいつになるのでしょう。実に待ち遠しい限りです。いっそのことハードカヴァーを買ってしまおうか・・・そんな衝動にかられたりもするのですが、私もアウグストゥスの辛抱強さを見習って、ひたすら文庫化を待ち続けることにしましょう。
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