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2004/11/08(月)
落語・『死ぬなら今』八代目林家正蔵
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名人・八代目林家正蔵の亡くなる三年前、最晩年の高座の録音です。 声のふるえ方はまさに弟子の菊蔵が真似しているそのまま。それはまぁ、いいのですが、さすがにテンポの遅さは気になりました。
しわい家、つまり「ど」がつくほどのケチが主人公です。 ケチ家ケチ兵衛とあだ名されているほどのケチさで一代で財をなした大店の旦那、いまわのきわに息子に遺言をします。 「俺は金を儲けるためにずいぶんあくどいことをやってきた。このままだと地獄行きは間違いないだろう。そこでお前に頼みがある。ずだ袋にいれるさんずの川の渡し賃の六文銭、その代わりに黄金三百両を入れておくれ」 息子に「必ず守る」と約束されて、旦那はホッとした拍子にぽっくり。 ところが、葬儀で息子が三百両を入れようとすると、お節介な親戚がこれを止めます。「どうせ土に埋めるんじゃねぇか。芝居の作り物の小判で充分だ」息子もついその言葉に従ってしまいます。 さて、あの世に逝った大旦那、閻魔大王の前に立たされて、これまでの悪行を次々と暴かれてしまいます。そしてついに地獄行きの沙汰を申しつけられようというとき、ずだ袋から小判を取り出し、閻魔大王の袖の中に投げ込みます。とたんに態度が豹変する閻魔様・・・。
オチが気が利いていて、好きな噺の一つです。以前に聞いたときは誰だったか・・・その時も正蔵だったかもしれません。この番組は再放送ですからね。
八代目林家正蔵は、前の名を五代目蝶花楼馬楽と言っていて、本人は五代目小さんを継ぐつもりでいたようです。落語史的に馬楽は小さんを襲名する前の名なんだそうですね。 ところが当時の小三治が五代目小さんを継いでしまいます。それでへそを曲げるのですが、「小さん」と同格の大看板「正蔵」を七代目林家正蔵の遺族(海老名家)から一代限りの約束で借りるということで話がつきます。 ところが、七代目の長男であり、「正蔵」を継ぐはずだった三代目林家三平が1980年(昭和55年)9月に亡くなってしまいます。そこで生きている間に正蔵の名前を海老名家に返す決心をして、1981年(昭和56年)1月に「林家彦六」に改名したのだそうです。しかし、改名後一年で亡くなってしまったので、いまだに「正蔵」という名で呼ばれることが多いのだそうですね。 この経緯からすると、こぶ平が「正蔵」を継ぐのは妥当といえば妥当なんですよね。 問題は、それだけの大看板を背負う実力があるのか、ということで・・・
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