☆QSANの備忘録兼用の不定期の雑記帳です☆
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2004/09/25(土) 秋刀魚の歌
☆永らく徒然日記をご無沙汰しています。余り長く無音が続くとレンタル日記が削除されかねません(^^)。さりとて格別記述したき事柄もなし…つなぎに、佐藤春夫の「秋刀魚の歌」でもご紹介しましょう。秋刀魚が美味しい季節ですから。(^^)(お茶濁し)

☆(閑話休題)
 『あはれ
  秋風よ
  情(こころ)あらば伝へてよ
  −−−男ありて
  今日の夕餉に ひとり
  さんまを食らひて
  思ひにふける と。

  さんま、さんま
  そが上に青き蜜柑の酸(す)をしたたらせて
  さんまを食ふはその男が ふる里の ならひなり。
  そのならひをあやしみなつかしみて女は
  いくたびか青き蜜柑をもぎて夕餉にむかひけむ。

  あはれ、人に捨てられんとする人妻と
  妻にそむかれたる男と食事にむかへば、
  愛うすき父を持ちし女の児は
  小さき箸をあやつりなやみつつ
  父ならぬ男にさんまの腸(はら)をくれむと言ふにあらずや。

  あはれ 
  秋風よ
  汝こそは見つらめ
  世のつねならぬかの団欒(まどゐ)を。
  いかに
  秋風よ
  いとせめて 
  証(あかし)せよ かの一ときの団欒(まどゐ)ゆめに非ずと。

  あはれ
  秋風よ
  情(こころ)あらば伝へてよ、
  夫を失はざりし妻と
  父を失はざりし幼児(をさなご)とに伝へてよ
  −−−男ありて
  今日の夕餉に ひとり
  さんまを食らひて
  涙をながす と。
 
  さんま、さんま、
  さんま苦いか塩っぱいか。
  そが上に熱き涙をしたたらせて
  さんまを食ふはいづこの里のならひぞや。
  あはれ
  げにそは問はまほしくをかし。』(佐藤春夫「秋刀魚の歌」)


  


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