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2005/03/22(火)
Friends/Joe Hisaishi
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春はいい。暖かい。なんたる奇跡か今年は花粉症ないに等しいくらいの症状だし(去年まではさんざん悩まされましたが…悩まされてる方々に厚く同情…)なんか罰があたりそうなくらい眠くて平和なまったりした日でした。にゃー。でもこういう日に限ってやたらにテンションは低いです。でも思います、テンションは低めがいいですよ、低燃費だし。読書のスピード格段とあがるし。
僕の回りには、特にここ数年、気持ちの悪い恋愛スタイルを展開する人が多いな。僕から見ての気持ちわるいだから別に全然構わないんですけどね、私的にヤダ。気持ち悪い。いや、もちろん僕にはそんなことをいう権限もないし言う気もさらさらないですが、ただたんに、そのせいもあって純粋なるイデアとしての恋愛と、いわゆる「彼女」だの「付き合う」だののそういった戯れとの意義乖離が進んでるな、僕の中で。何がいいたいかっていうと…純然な恋をするというプロセスを重視したいってことです。今はそれで十分です。んで数年したら、別に「結婚できればいい」ってだけですから。
『月の梯子』(1/12:フィギュアスケーターの恋の続) 彼とまたあったのはあれから二ヶ月後の春先の頃、梅の花が散り始め、暖かい日が何日か続きマフラーをしまいロングコートをクリーニングに出した頃であった。いつもの用で車に乗って甲州街道を帰る途中、たまたま目に飛び込んだ道路標識の地名二文字。薄墨のような夕闇に人工的な青い看板の不健康な白い文字が、なぜだか暗示的に写った。僕はハンドルを右に切った。折しも雨が降ってきたようだ。乾いたエンジン音が急にくぐもった。 ワイパーはつけなかった。ゆったりとしたテンポで落ちる水滴が花火の様な輪郭をフロントガラスに残して信号の原色が屈折した。 花火か…。花火なんてあの年の夏以来一度も見ていない。もう何年前になろうか、数える気にもならない。だが僕は、花火、その言葉を、その像を連想する度に記憶の逆流に苛まれてきた。今もそうだ、やれやれ。ああ、そうだよ。僕はあの時月をみていたんだ。花火でもなく、となりに座る君でもなく、花火が上がる空の九十度右の少し寂しげな月をみていたんだ。 エンジンを切る音で、初めて自分が目的地につき、自分の右手でキーを回したことに気付いた。雨音がエンジンを切るのを待っていたかのように僕の回りに押し寄せた。僕はその建物をろくに見もしないで入り口の方に歩き出した。ちょうど車と建物との距離の半分を程を歩いたところで、僕は気配を感じ顔を上げた。彼はちょうど入り口を出てこちらに歩いてくる所であった。測ったように垂直にさされたインディゴの傘で顔の半分が隠れてはいたが、僕はすぐにそれが彼だとわかった。そして、その時に気付いた。このアイススケート場の前に彼が現れることを、僕は知っていた。いや、もちろん彼が表れるまでは僕にはまったくそんなことは知るよしもなかった。僕はただ、道草に差し障りのない場所に車を走らせただけのつもりであった。だが、僕は知っていた。そして、知った。彼がこれから僕にいう言葉を。どっちが先にきこえたかはわからない、彼と僕はほぼ同時にしゃべった。彼は彼の言葉をしゃべり、僕は知ってしまった彼の言葉をなぞった。 「雨は好きなんだ。雨の日は…ごらんよ、月に梯子がかかった様に見えるんだ。昇りかけた月に梯子がかかってる。」 見上げた月の梯子は、こちらへ降りてきているようにも天空へ昇っていってるようにも見えた。水滴が目に入った。顔を前にもどすと光が滲んで頬を伝った。彼は両腕を空に伸ばして月の梯子をとらえようとしていた。
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