徒然ジムノペディ
ここは管理人KAHNの日々の徒然を書き綴ったどうしようもないページです。
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2005/01/12(水) 今日の一曲:Hyper-ballad/Bjork
結構ショックだった。ギターへただ。真剣な努力がいる。数学なんかよりずっと。

最近の気分とビョークは相性がいい。ビョークとベートーヴェンのピアノソナタも相性がいい。某クラスメイトにも薦めましたが今日の一曲のこのビョークの曲はやばいです。大好きです。トベます、この曲。

タバコは吸わないって決めてるけど、どうしても吸いたくなる時がある。チョコレートでも食べてごまかそう。人間て不器用な生き物だと思う。




『フィギュアスケーターの恋』

夢を見た。物語でも書けそうな夢だった。フィギュアスケーター(?名称がよくわからんがフィギュアスケートの選手ね)の僕の友達が恋に落ちた話だった。彼は古くからの友人のように僕にいろんなことを話しかけた。僕は夢の中では違う人だった。でもなんだかめんどくさかったから彼には隠してたんだ。彼は自分がいかに激しい恋に落ちてるかを僕に身振り手振り一生懸命表そうとするんだ、だけど残念なことに彼は言葉を使って自分の気持ちを明確に表現することを苦手とするタイプのようだった。気の毒だとは思ったが聞いてて僕も彼の話のあまりの表現のたどたどしさをじれったく思った。ちょうど鬼才の芸術家が自分の哲学や思想について言葉であらわすことを苦手とするように、アインシュタインが自分の頭の中で構築したセオリーを紙に表すことを大の苦手としたように、彼は彼の感情を表す能力を持ち合わせていなかった。
 最後に彼は、涙を流した。自分の気持ちが僕に伝わっていないことに気付き、それに対してひどく傷ついたのだろう(どうやらこの世界での「僕」は彼にとってある程度重要な意味合いを持つ人間みたいだ…)。彼はそっと立ち上がって、リンクの中央まで、まるで幻覚みたいにするりとすべっていった。彼の後ろ姿は輪郭がぼやけてそのままきえてしまいそうだ。消えたら…どこへいくのだろう?気の毒だとは思うが、僕にとっては彼のことはまだ他人事だった。だってそうだろう、彼が誰かも僕は知らないんだ。この世界の「僕」の親友なんて、朝起きて学校にいかなきゃ行けない身でとにかく体を休めるために寝具に横たわってるオレには全くもって他人事だ。僕がそんなことを思ってぼぉっと彼を観ていると、彼はリンクの中央で両腕をひろげ天を仰いだ。音楽がなりだすのを待っているようだ。音楽はならない、僕と彼以外誰もいない閑散としたスケートリンク。彼が天に祈った姿勢のままならない音楽を待ち、どのくらいの時間がたっただろうか。…音楽が静かにかかりだした、なんの曲だろう?小さく不安定の流れる木管楽器の旋律、たどたどしいソロ…おそらくロマン派の作曲家によるクラリネットの協奏曲だろう。
いや、正確には音楽は流れてなかった。が、僕には確かにきこえていた、僕が心の中で呟く声と同じ発信源から確かに音楽はきこえていた。そして、彼も確かに同じ音楽を聴いていたのだ。彼は両腕を包み込むように下ろし、しずかに旋律にあわせてスピンを始めた。ゆっくりと静かに氷を削る音だけがリアルな音として響き、異次元の音楽とひどく不響な響きを作り出していた。彼は踊った。優雅に、氷のように悲しく。絶対零度、分子が完全に振動を止める温度、彼の滑りはそんな言葉がよく似合った。もう、そこからは言葉で表現することはできない。が、涙を流しながら、両手で何かを探し求めながら踊り続ける彼を見て、ぼんやりとした頭で僕はこう思った。この姿を僕は一生忘れることはないだろう、と。案の定、僕は忘れなかった。目が覚めても。
夢の中からこちらの世界へ戻ってくるのにどれだけの距離、どれだけの時間を移動したのかはわからない。が、おそらくそれは我々の想像を遙かに上回る長さであろう。多くの夢の、いや、もう一つの世界での、体験はその帰路の空間的時間的距離の途方もない長さによって、鮮明さを失い、記憶として不十分な形になり、夢、幻というレッテルを貼られることになる。
 僕は忘れなかった。記憶も枯れるほどの時と空間を経ても、僕は忘れなかった。あの、一人のフィギュアスケーターの恋を。その悲しみを。
 悲しみの一つの形は美しさである、ということを彼は僕に教えてくれた。


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