ぐうぐうぐうぐうぐうぐうぐう(仮寓)
毎天要読書
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2013/05/31(金) 自伝
姉に貸してもらった『コールドゲーム』という文庫があまりに面白くなく、でも基本的には読み始めたものは最後まで読もうとほどほどの努力はしてみるんです。
それにしても、登場人物たちに愛着も湧かないし、話の展開は遅すぎるし、全く読み進めることができない・・・。
こんなことは珍しいです。

昨日ジョギングの帰りにBOOK OFFに寄りました。500円玉を1枚ポケットに忍ばせてただけなので、すなわち105円の本4冊分の予算。欲しい本が随分あったのですが、吟味に吟味を重ねて4冊にまで絞りましたが、迷わず選んだのが陳舜臣の『青雲の軸』という一冊でした。
陳舜臣は『小説十八史略』を書かれた有名な歴史小説家ですが、神戸育ちの華僑(ご両親は台湾出身だそう)で大学も大阪外大つまり現在の大阪大学外国語学部卒なので、いささか無理矢理ですけど大学の先輩と言えなくもなく。
また単にそういった関西出身だという共通点とか出身大学の繋がりから親近感を抱いているだけでなく、先生の文章は飾らず気取らず驚くほど読みやすい文体でありながら、至るところ文才が光り輝いているのが分かるので(とか偉そうに言いつつ私も十八史略は最後まで読み切ったわけではありませんが)、要するに私は陳先生を尊敬しているのです。一言で言うと、ファンなわけですね。
文庫の背表紙に、先生の「自伝的小説」だと書かれていたので、自称陳先生ファンの私買わないわけにいきません。

今朝通勤電車の中で、読みかけの『コールドゲーム』があるんだけど、基本私は同時に2冊読み進めることはできない性質なんだけど、誘惑に負けて『青雲の軸』の表紙をぴら〜とめくってしまいました。
そしたら、『コールドゲーム』がよっぽど肌に合わなかったその反動なのか。

『青雲の軸』面白過ぎる・・・。

食いつくように読みふけっていた矢先、車掌の
「京都、京都です」
という到着のアナウンスが聞こえた時の失望感と言ったら無かったです。

いつも惰眠を貪っている昼休みにも、必死で続きを読んでました。そんな姿が珍しかったのか、派遣のお姉さんが「何勉強してるんですか?」と不思議そうな顔して聞いてきました。

読書ってこんなにもこんなにも面白かったのか・・・。
久々に、新鮮な驚きを伴って実感しました。
結局帰宅後夕飯もそこそこにすぐに続きを読み、9時前には読み終わってしまったんだけど、最後のページにたどり着いた時の、「終わってしまう」というあの喪失感と言ったら。
ここ最近読んだ本は、いずれも読み終えた時は、とりあえず1冊本を読んだという事実に対する満足感か、あるいは「やっと読み終わった」という疲労感しか感じることがありませんでしたが、今回は読み終わっちゃったのが残念で仕方なく、もう一度最初から読まずにはいられないくらいです。
(余談ながら、私の大好きな台湾が陳先生のルーツだっていうんだから、ますます惹きつけられて仕方がありません。勝手に先生のご先祖は中国本土の方々だと思ってました)

私は、自伝が好きなのかもしれません。
『青雲の軸』はあくまでも「自伝的小説」であって、主人公の名前も陳舜臣(ちんしゅんしん)ではなく陳俊仁(ちんしゅんじん)だし、書かれたもの全てが事実なのかどうかも疑わしい。
それでも、「陳さん」という1人の人間が、どう生きてきて、何を思い何を考えたか、それを共有してくれてると思うだけで、誰かが誰かに殺されてアリバイ工作がどうのこうのっていう完全なる机上の創作物よりも、何十倍もの魅力を放って見える。
私の大切な『次郎物語』も、主人公次郎の生い立ちは作者下村湖人自身と重なる部分があるし、福沢諭吉の『福翁自伝』も、なかなか難しかったのにも関わらず夢中で読んだものだ。
太宰を好きなのも、あの人の書くものの多くに「太宰さん」や「津島さん(=太宰の本名)」が出てきて、あたかも自分自身の体験をそのまま綴ったんじゃないかと、まるでブログを読んでるような錯覚を起こさせるところに妙に親近感を抱いてしまうからです。

でも、多分『青雲の軸』にここまでのめり込む人はあまりいないんじゃないかと思われます。友達に薦めて、気に入ってもらえる保証は全くない。
世間ではきっと、人が簡単に殺されたり自殺したり不倫したりしてこんがらがった難解事件のほうがウケるんでしょう。
なので、誰かに薦める代わりに、ここに書いておくことにしたのでした。


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