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2005/01/19(水)
ユージン・オニール作『氷人来る』について=小田知毅=
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ユージン・オニール作『氷人来る』を読んだ。まともに上演すると5時間近くある長大な作品。大交響曲だ。とある酒場で実現できたはず、今でも実現できるはずと思い込んでいる夢や希望をダラダラ語り合う挫折者たち。そこにかつて同じダラダラ仲間であったはずの男ヒッキーが行商から帰ってくる。ヒッキーがかつての仲間達を、空虚な夢の世界から疑いようのない自己へ引き戻そうとする。酒びたりの仲間たちに降り注がれる凄まじい弁舌の雨アラレ。ついにヒッキーによって引き剥がされた空虚な夢の下にあるものは死だ。夢を失い死と対峙してどうやって生き続けるのかが問われている作品だ。読み終えた今、いかに死ぬかという問いかけが心にゴツゴツぶら下がっている。そしていつかやってみたいなと、小さな野心がグイっと首を持ち上げた。酒場の連中のように空虚な夢を描いてなんだかウキウキしている。ヒッキー役をケヴィン・スペイシーが演じブロードウェイやウエストエンドで好評を博したそうだ。
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