つれづれなるままに。
日々の戯れ言や小咄(書きかけ含む)、感想等々。
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2006/10/11(水) カタコトノコトノハ
【彼岸花】




 紅い、紅い記憶。

(焔?)

 揺らめく光。
 人々のざわめき。

(傷、つけんなってばよ)

 木々が燃える。
 大事な里が燃やされる。

(やめろ…)

 沸き起こる怒り。

(……守らなくちゃ)

 守らなくちゃ
 守らなくちゃ
 守らなくちゃ

 ――オレの、里なんだから!





「こんな所で寝てたらダメだよ」
「え?」
 優しげな声に起こされて、ナルトは目を開ける。
 彼岸花の間でいつの間にか眠っていたらしい。
 傍らにしゃがみ込んでナルトを覗き込んでいる青年がいた。
「この花はあんまり良くないから、良い夢なんか見られないよ」
 彼岸花を指して笑って告げる顔はどこかで見たことのある顔。
「そ…なのか?」
 柔らかく眇められる青い瞳に懐かしさを覚えた。
「そう。だから、ちゃんと起きて、おうちに帰りなさい」
 意識的に起きているはずなのに、頭の中にはうっすらと靄がかかっていた。
 だからなのか、目の前にあるこの青年の顔がはっきりと判別できない。
 金の髪、青い瞳、印象的なその彩は解るのに細かい口元や鼻の形を探ろうとすると難しくなる。
「だからかな…怖い、夢…見たってばよ」
「紅い夢?」
(そう言えばそんな色してた気がしたなぁ)
「うん…何で解るってば?」
「彼岸花の側で寝ているからだよ。でも、もう大丈夫。怖い夢は終わったからね。……思い出さなくていいよ」
 ふわりと風が撫でるように青年の手がナルトの髪を撫でる。
 ナルトは寝ぼけ眼を擦りながらムクリと上半身を起こした。
「ん…ありがと、兄ちゃん」
「……どういたしまして」
 間を置いて返された言葉に首を傾げながら、ナルトはふらりと立ち上がる。
「気を付けて帰るんだよ」
「大丈夫だってばよ!」
 まだ眠気の残るふにゃりとした笑みで返すと、ナルトは一歩を踏み出した。
「…あ」
 どこかで会ったっけ? そう問い質そうとしてナルトが振り向いたその時には、既に青年の姿は無くなっていた。
 よく見れば、彼岸花の回りにあるのはナルトが踏みしめた後だけ。
「…っと、これってばさ…………」
 サーッっとナルトの顔が青くなる。
「ゆゆゆ…幽霊っ!?」
 思い至った答えにナルトは飛び上がった。
 足…は確認できなかった。青年の顔を思い返そうとしてもその輪郭は朧気で不確かだ。
「……でも、怖くなかったってばよ」
 どこか懐かしい気配のする幽霊だった。
「見たことないはずなのになぁ」
 思い出せるのは金の髪と青い瞳。
 自分とよく似た色をしていた。
 見下ろした先には点々と生える彼岸花。
「紅は……炎の色?」
『思い出さなくていいよ』
 青年の声がふと過ぎる。
 耳に心地の良い声だった。
 思い出すと胸がすっと静かになっていく。
 うっすらと頭の片隅に残る――鮮やかな色彩。
 けれど、清流のような青年の声がそれらを薄らげた。
「帰るってばよ」
 ナルトは家路を急いだ。







 彼岸に咲く、朱い朱い朱い華。

『記憶、オレのが染みついてたのかな?』

 先程の青年は傍らに咲く彼岸花を見下ろし呟く。
 紅い、炎のような華。

『今でも耳に残っているよ、あの時のみんなの声』

 ――四代目!
 ――火影様!

『間に合わなかった者もいた。沢山の犠牲も出た』

 ここにいた少年もまたその一人。
 天まで届くような炎が空を紅く染め上げていった、あの日の光景。

『罪の意識として苛まれるなら、こんなものは見ない方が良い』

 君がそんなものを見る必要はない。
 その身に受けた仕打ちだけでも十分。

『小さな、オレの英雄』

 誰が何と言おうと、里を守ったのは自分に最上の喜びを与えてくれた金の光だったことを。

『この身が滅んでも、想いだけになったとしても、オレはちゃんと覚えているよ』



―――――――――――――――――――――――――――――
本当に短いし、一日過ぎてしまいましたが、ナルトお誕生日おめでとうの気持ちをこめて。
ナルトが幸せになってくれることが、四代目の幸せだと思います。
か…語り出すと止まらなくなりそうなので、この辺でっ!!


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