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2005/09/29(木)
SSS【ススキ野原】
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夏が終わり秋へと移り変わった空気はどこか凛としていて、祭りの後のような一抹の寂しさを胸に過ぎらせる。 天空には夏よりも冴えた月が浮かび、辺りを照らしていた。 銀色に降り注ぐ光は昼間とは違う明るさをもたらし、足下の心配をすることもない。 「ナル君、お散歩行こうか」 「うんっ」 小さなナルトの手を引き、ススキ野原へと足を運ぶ。 さわさわと風にそよぐススキの音。冷たい風が頬を掠めるけれど、繋いだ手の温かさはそれを簡単に消し去ってくれる。 「ほら、ナルト」 背の高いススキを手折った四代目は、ススキの頭の部分に当たる場所をナルトに向ける。 「ふわふわー」 ナルトはススキの穂をその小さな手で掴むと、嬉しそうな顔で父親を見上げた。 「ホント、ふわふわだね」 傍らで優しい眼差しを向けた四代目は、しゃがんでナルトと同じ視線になると、ススキに負けない金色の髪をくしゃりと撫でた。 柔らかな髪の毛。掌から伝わる体温に自然と頬は緩む。 「これをね、こうするとー」 四代目はもう一本手にしていたススキの穂の部分を丸めると、どこからか取り出した糸のようなものでそれをくくった。 「はい」 「うさぎしゃんっ」 ナルトの目がまん丸く見開かれる。 四代目の掌に乗せられていたのはススキの穂で作られた兎だった。 喜ぶナルトにそれを手渡すと、今度は違う形を作る。 「これなーんだ?」 「?」 「フクロウだよ」 「ぅくろう?」 よく解らないのか、ナルトは首を傾げて父親の掌に乗せられた物へ手を伸ばした。それを手渡しながら、四代目は簡単に説明する。 「フクロウさんはね、ホウホウって夜に鳴く鳥さんだよ」 「ふぇ〜」 ナルトは感嘆の声を上げながら父親とススキのフクロウを交互に見つめた。 「ふくろうしゃん、あえるってば?」 「うーん、どうだろね? 声ぐらいは聞けるかもしれないけど…」 いるとしても林の中だろう。こんな止まる木もないような場所には現れそうもない。 しかも、こんな風に可愛い生き物でもない。 「また今度見せに連れていってあげるよ。だから、今日はこれで我慢して。ね、ナル君」 困ったように笑いながら告げる父親に、その心情が伝わったのか、暫くジッと父親を見上げていたナルトは納得したようにコクンと頷いた。 「ふわふわのうさぎしゃんとふくろうしゃん、かわいってばよ」 にっこり笑ってナルトは小さなススキ細工に頬ずりをする。 「ナル君はその子たちをちゃんと抱っこしててあげてね」 「んっ」 「で、お父さんは…」 四代目は立ち上がり、ナルトの脇に手を差し入れると、その小さな身体をひょいと抱き上げた。 「ん。これで準備万端」 目の前にある柔らかなほっぺたに四代目は自身の頬を擦りつける。表面のひやりとした温度が伝わってきた。 「冷えちゃったね。おうちに帰ろ」 丸い額にこつんと額をぶつけて、青い大きな瞳を覗き込みながらそう告げる。 すると、四代目の目の前で満面の笑みが零れた。月の光の中でも太陽のような眩しさを思い出させる笑みに、四代目は目を眇めて見つめる。 「…んしょ、んしょ」 ナルトはシャツの襟元からススキの兎と梟を入れると満足したように頷き、空いた細く柔らかい腕を四代目の首にふわりと絡めた。 「こうするとあったかいってばよ」 そんな可愛らしいナルトの声が耳元を擽る。 「そうだね、すごく暖かい」 柔らかな身体を少しだけ力を込めて抱きしめ返しながら、四代目はナルトの言葉に頷いた。 そうして、四代目は幸せな重みを腕に感じながら、この時間が少しでも長く続くようにと、ゆっくりと月夜の道を歩き始めた。
---------------------------------------------------- お久しぶりの小咄です(汗)。 秋は四代目とナルトの季節だよねーと思いながらススキに萌えてました(笑)。
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