つれづれなるままに。
日々の戯れ言や小咄(書きかけ含む)、感想等々。
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2005/03/18(金) SS【ホワイト・デー】その4
「うわっ! と、父ちゃんっ!?」
 驚きの悲鳴を上げ、ナルトは肩越しに抱きついてきた犯人を見上げる。
「何やってるんだってばよ?」
 尋ねながら笑いかけてくる顔はこの上なく可愛くて、四代目の抱き締める腕の力は無意識に強まってしまう。
「と、父ちゃん!? 苦しいってばよ!!」
「あ! ごめん、ナル君……」
 もがき訴えるナルトに気付いて離すかと思えば、今度は涙目になって怒る息子が可愛くて、再び同じ過ちを繰り返した。
「もうっ、いいかげん離せってばよ!」
 怒りを滲ませた声で窘められ、四代目は渋々と言った体で息子から離れる。
 その見慣れた光景を眉を顰めながら睨み付けていたサスケは、四代目から解放されたナルトを呼び止めた。
「おい、ウスラトンカチ」
「あん?」
 相変わらずの物言いにナルトがムッとしながら振り向けば、サスケが自分に向けて右手を差し出していた。その手に持っているのは先程包んだ物とは別の少し大きいサイズの箱で、それが何を意味しているのか解らないナルトは首を傾げる。
「? 何だってばよ、コレ?」
「いいから、受け取れ」
 押しつけられるように渡され、ナルトは怪訝に思いながらも受け取った。ナルトがちゃんと受け取ったのを確認すると、いつものポーカーフェイスに照れを滲ませた表情でサスケが告げる。
「……バレンタインデーの礼だ。渡してなかったからな」
 ナルトはしばし呆けたような表情を浮かべていたが、やがて、ポンと右手を左手の平に打ち付けた。
「忘れてたってばよ」
 思い出したナルトは、驚いた顔をすぐに喜色に染める。
 それは別にサスケから心からのお返しを貰ったことが嬉しかったわけではなく、忘れていたところに来て、こんな大きなお返しを貰ったのが嬉しかっただけのことだが、そんなナルトの胸の内など知らないサスケはナルトの反応にまんざらでもない表情を浮かべる。
「サスケ、ありがとうな」
 綻んだ笑顔を向けられ、サスケの頬の赤みが増した。
(ちょっと得した気分だってばよ)
 ナルトがサスケにあげたのは板チョコ(しかもバレンタインデーの売れ残り)一枚だったのに、手作りとはいえ味の保証は先程試食して知っている美味しいケーキを頂いたのだから、手放しで喜んでもおかしくないだろう。
 しかし、その様子を愕然とした表情で見ていた四代目は、サスケの台詞とナルトの態度に驚愕の叫びを上げた。
「な……ナル君っ!! どういうことっ!?」
 肩を鷲掴みにして常にない表情で問い質す父親に首を傾げながら、ナルトはサラリと理由を説明する。
「バレンタインデーにサスケにチョコレートあげたんだってばよ」
 その台詞に、四代目の顔がサーッと青くなる。
「それとサクラちゃんにも」
「へ?」
「はい、ナルト」
 ナルトの言葉を見計らっていたように、サクラからも先程とは別に作ったと思しき箱がナルトの前に差し出される。すると、ナルトは驚いた表情でそれを見、すぐに父親を押しのけて受け取った。
「うわ、ありがと、サクラちゃん!」
 嬉しさに頬を染めて喜ぶナルトだったが、
「チョコレートの御礼よ。勘違いしないでよね」
 と、サクラに釘を刺され、グッと詰まる。
「わ…解ってるってばよ……」
「い…いつ、あげたの?」
(あの日は朝からほぼ一緒だったはずなのにっ!)
 隠しきれない動揺を面に表したまま四代目がナルトに尋ねると、
「父ちゃんと別れた後だってばよ」
 あっさりとした答えが返ってくる。
「カカシ先生にもあげたから、お世話になってるってことでサクラちゃんにもあげたってば。サスケはまぁ…オマケみたいなもんだってばよ」
 お色気の術で女の子の姿をしていた為に買いやすかったことも、ナルトの行動に拍車を掛けた。
「そ…、そうなの。サスケ君はオマケなんだね」
 四代目は『オマケ』の部分をいやに強調して畳みかけるようにナルトに問いかける。その機微に気付かないのはナルトぐらいだろうが、当の本人は父親の気迫に気圧されていてそれどころではなかった。
「え…あ…そうだってばよ?」
 後ずさりながらコクコクと頷くと、あからさまに安心する父親の姿。
「それなら良かった」
 ホッとした様子の父親にナルトも安堵した。
(いったい、何だったんだってばよ…)
 そんなことを思いながら首を傾げるナルトは、一人殺気を迸らせているサスケも、呆れたように首を振っているサクラの様子も気づくことはなかった。
「で、ナル君はサクラちゃんにお返ししたの?」
 気を取り直した四代目が父親の顔で問いかければ、ナルトはハッとして自分の使っていた台から一つの包みを手に取った。
「そうだってばよ! はい、サクラちゃん」
 ナルトはにっこり笑って、不器用なりに一生懸命包んだと思われる箱をサクラに差し出す。
「ありがと」
 苦笑しながらもサクラはナルトからのお返しを受け取った。
「じゃあ、これはお父さんからね」
 大きな箱にピンク色のリボンを掛けられたそれに、ナルトは目を剥いて凝視する。
「……いつの間にこんなの作ってたってばよ?」
 動揺しながらもしっかりと父の愛を受け取ったナルトは、呆然とした様子で尋ねた。


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