つれづれなるままに。
日々の戯れ言や小咄(書きかけ含む)、感想等々。
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2005/03/15(火) SS【ホワイト・デー】その2
「みんなにはこれからお菓子を作ってもらいます」
「お菓子〜?」
 怪訝な声が三者三様で上がる。胸元で上がった不服そうな訴えにも耳は貸さず、四代目は答えるように頷くと、次の行動に移るべく指示した。
「うん。もう場所は借りてあるから、そこに移動するよ」
 四代目が3人を引き連れて向かったのは、その設備は一流レストランに引けを取らないと言われているアカデミーの調理室だった。
「材料も用意してあるから、この数分のお菓子を作ること。はい」
 そう言って手渡されたのは、パウンドケーキのレシピと一人につき50個というノルマ。
「これだけ設備が整っていれば大丈夫だよね。あとはまぁ、体力勝負ってところかな?」
 顎に指をあてて少し考えるように首を傾げつつ、四代目はさらりと言った。
「んなっ!?」
「物はともかく、何、この量っ!?」
「…………何でこんなことしなくちゃいけねーんだ?」
 あげた声こそ違ったが、目を通した3人の思いは一緒だったらしい。
「今回の依頼は『バレンタインデーのお返しを作ってもらいたい』とのことです。あ、ちなみに依頼人は四代目火影ね」
 極上の笑みと共に告げられた内容に、3人の柳眉が上がる。
「「意味無いじゃんっ!」」
 サクラとナルトのツッコミが見事に重なり、
「……馬鹿らしい」
 サスケもまた同様の呟きを漏らす。
「そうは言っても一応正式な依頼だからね。やってもらわないと」
 依頼を出す人間が受ける人間だったら、それが通らないワケがないだろう。
「詐欺だってばよ……」
 恨めしげな表情と声でナルトはすぐ側の父親を見上げる。いつもはそんな息子の表情に弱い四代目であったが、今日ばかりは違った。
「そんなこと言わないの。少しは将来に役立つかもしれないし、ね」
 息子の背を押し、3人にエプロンを配る。
「手はよく洗ってね。それでは開始!」
 かけ声と共に皆慣れない材料と格闘を始める。
 依頼人であるはずの四代目もまたエプロンを掛け、ナルト達とは違う物を作っていた。
「父ちゃん、何作ってるってばよ?」
 気付いたナルトが四代目の側に寄って覗き込む。
「こら、サボってちゃダメでしょ、ナル君」
 今日は指導者である四代目は、甘やかしてはいけないと眉を寄せて怒るフリをしてみせた。あくまでもフリだけで、心の中では可愛い息子と一緒の一時に頬を緩ませているのは見え見えだ。
「サボってなんかいないってばよ」
 むぅっと頬を膨らまし、ナルトは手に持った作りかけの種を「ほらっ」と言って父親に見せつけた。その可愛らしい仕草に四代目はこっそりと口元に笑みを浮かべる。
「バレンタインのチョコレートはナル君もご相伴預かったもんね。しっかり美味しいケーキを作るんだよ」
 それでもナルトの口から不満が飛び出る前にさりげなく退路を塞いでおくのは、可愛い故に虐めたくなる気持ちと一緒かもしれない。
「う゛……解ってるってばよ」
 ご相伴どころかほぼ食べ尽くしたと言っても過言ではない記憶のあるナルトは、持ち場に戻るとケーキ作りに集中し出す。その様子に苦笑しながら、四代目もまた自分の作りかけの物を仕上げる為に動き始めた。
(ナル君に見られてたら作りづらいもんね)
 そう。こっそりと、ある意味大胆に、四代目はナルトへのお返しを作っていたのだ。
 暫くしてみんなが落ち着き始めると、四代目は見回って様子を窺う。
「サクラちゃんはどうかな?」
「何とか出来そうです」
 掌で指し示されたオーブンを覗き込むと、そこには綺麗な形に仕上がっているケーキが焼き上がりかけている。
「流石、女の子だね。綺麗に出来上がりそうだ」
 里長に褒められたのが嬉しかったサクラは、頬を染めて満面の笑みを浮かべた。
「サスケ君は……まぁ、そんなところかな」
 出来映えだけで言えばサクラとそんなに変わりないはずであるのに、サスケに向ける四代目の言葉は冷たい。
「どーも」
 返すサスケもいつも以上の仏頂面だった。
 私情を入れるのは指導者としてどうかと思うが、この目の前の里長に関しては今に始まったことではない。何しろ、その親馬鹿ぶりは里中に知れ渡っている程なのである。
 ただ、サスケに対する態度は他とはまた違う含みがあり、その事と理由をサスケ自身知っていたから、甘受はしていないが仕方ないことと受け入れていた。
「ナル君はどう?」
 サスケにかけた声とは正反対の甘い声で、四代目は息子に様子を伺う。
「あとはオーブンに入れるだけだってばよ」
 形は少しばかり悪いが、レシピ通りに作ったケーキをナルトが見せると、それを確認した四代目は、
「ん、良く出来てるね」
 そう言って、ナルトの頭を撫でながら褒めた。
(……親馬鹿)
 少なからず見慣れた光景に、サクラとサスケは同様の呟きを心の中で漏らす。
「あ、そうだ。出来上がって余ったのは持ち帰って良いからね」
「本当ですか?」
 嬉しそうに尋ね返すサクラに、四代目は笑って頷く。
「ん。それがオレから君たちへのご褒美」
「やたっ!」
 ナルトも嬉しそうに笑っていた。
(……それって、材料与えただけで、自分で作れってことじゃねぇかよ?)
 それでも嬉しそうにしているサクラやナルトは何の不満もないようで、サスケだけが心の中でツッコミを入れる。
 だが──
(まぁ、ここまで大量に作れば、自分の分の一つや二つ作る手間なんか無いに等しいか……)
 思い直したサスケは余った材料をジッと見つめると、先程よりも慎重に、且つ、数倍の手間をかけて新しいケーキを作り始めた。


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