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2005/03/14(月)
SS【ホワイト・デー】その1
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「さぁ〜て、ナル君には何をお返ししてあげようかなぁ?」 周りを気にしない浮かれた声が、そんな独り言を漏らした。 (邪魔者もいないことだしね) ふふふ…と、四代目はその形の良い口元に小さく笑みを浮かべる。 四代目の秘書であり、第七班の担当上忍であるカカシは一月前からSランク任務を立て続けに続行中だった。至極理不尽な任務の回され方ではあったが、里一番の実力者からの特務を断れるはずもなく、日々ひたすら消化中なのである。 「四代目、お仕事は……」 今にも飛び出していきかねない様子の里長に、一人の側近が恐る恐るといった様子で声をかけた。 「ん! バッチリだよ!」 晴れやかな笑顔を浮かべ、四代目は目の前の書類を見せびらかすように広げてみせる。そこには確かに承認が済んだことを示す印鑑が押されていた。 「ナル君の為に一生懸命頑張っちゃったよ。影分身まで使ってさ〜」 四代目は「やれやれ」と言いながら、自分の左肩を右手で揉み解す。 (これだけちゃんと出来るのなら、いつも真面目にやってくれれば良いものを……) 決して口には出さないが、その思いはこの場にいる一同の一致した意見だろう。 「さて…と」 イスから立ち上がった四代目は側近達の顔を見渡すと、 「それじゃあ、オレはこれで帰るから。何かあっても呼び出さないでね」 にっこりと笑いながら釘を刺し、颯爽とその場から消え去った。 「何かあったら呼び出してね」というのが普通だろうに、それさえも許さないらしい里長の心の狭さに、その場にいる全員が諦めの溜息を吐き出した。
「ナール君っ!」 「父ちゃんっ?」 慌てて声のした方を振り向けば、そのままギュッと抱き締められる。 声と共にナルトの前に現れたのは、朝から姿の見えなかった父親だった。 「待たせたね」 スリスリと息子の柔らかい髪に頬を擦りつけながら、四代目は詫びるような声音でそう告げる。 「へ? 別に待ってないってばよ? それとも、何か父ちゃんと待ち合わせしてたっけか?」 父親の腕の中で今の状況が解らずにナルトはグルグルと考えるが、どう思い返してみても父親の台詞の意味が解らなかった。 「今日の担当上忍が来てないけど…」 最近見ることの無くなった本来の担当上忍はこの際無視するとして、サクラは普通であれば有り得ないことを想像する。 (まさかねぇ…) しかし、その想像はすぐに現実となった。 「今日はカカシに代わって、僕が君たちの担当です」 ナルトだけではなく他の二人の顔も見回して、四代目は楽しそうな表情で告げる。 「「ええっ?」」 「……チッ」 ナルトとサクラの驚きの声にサスケの舌打ちが重なる。それは二人の声でほとんどかき消されていたが、それでも里一の忍の耳には十分に届いていたらしい。 「そこ、何か不満でもあるのかな?」 満面の笑みを湛えた四代目が問い質す。だが、その背中には見えない黒いチャクラがありありと渦巻いていた。 流石のサスケも火影相手に反抗する気になれず、渋々といった体で「別に…」と短く返すに留める。 「そう? じゃあ、任務を始めようか」 そうして一段落したことを確認すると、四代目はナルトを腕から離さないまま、3人に任務内容を告げた。
------------------------------------------- バレンタインに引き続き、ホワイトデーなお話です。 よろしかったらお付き合い下さい。。。
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