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2005/02/09(水)
SS【バレンタイン・デー】その3
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(チョコレートって…今持ってるのは父ちゃんにあげるヤツだから、カカシ先生にはあげられないってばよ) ここは諦めるしかないのだろうか…? だが、せっかくのイベントなのだから父親を驚かしたい。 それにはカカシに父親を呼びだしてもらう必要がある。 そんなことをグルグルと考えていたナルトは、手持ちのお財布を確認すると拳を握り締めた。 「カカシ先生、ちょっと待っててくれるってば?」 「ん?」 「速攻帰ってくるから、ちょっとだけここで待ってて!」 ナルトはカカシに指さしで念を押すと、猛ダッシュで走っていく。 「三分以内だぞー」 その後ろ姿に呼びかけ、カカシは突然出来た空き時間に愛読書である手持ちの本を読み始めた。 三分後、ボロボロになった状態でナルトが帰ってくる。 「こ…これで良いってば?」 荒い息をつきながら、ナルトは綺麗にラッピングされたチョコレートをカカシに差し出した。 「色気のない渡し方するね〜お前は」 その渡し方に眉を寄せてカカシは注意する。 「先生にあげるのに色気も何も無いってばよ!」 懸命に走って買ってきたチョコレートを受け取りもせずに文句を付ける上司に、ナルトは怒って頬を膨らませた。 「甘いぞ、ナルト。どうせ四代目にその格好でチョコレートを渡して驚かす気なんだろう?」 「う…」 計画をあっさりと言い当てられて、ナルトは思わず口ごもる。 「だったら女の子らしさを演出しないとな。いっくら可愛い女の子に渡されたとしても、そんな素っ気ない渡し方されたら嬉しさ半減だぞ〜」 「う…嬉しくないってば?」 心配げに尋ねるナルトに、カカシは神妙な面もちで頷き返した。 (いや、嬉しいと思うけどね) 心の中では反対のことを思いながら。 「『先生、大好きv』って言いながら渡してくれたら、先生すっごく嬉しいんだけどなぁ〜。それこそ、ナルトの頼みを喜んで聞いてあげちゃうぐらいにね」 先程よりも増えた条件に、ナルトの頬が更に膨らむ。 けれど、この条件さえ飲めば頼みを聞いてもらえるのだ。 「……絶対、約束守ってくれるってば?」 ジッと視線を送りつつ念を押せば、カカシはうんうんと頷く。そして、笑みを浮かべると、交換条件を提示してナルトに約束した。 「ナルトが先生のお願い聞いてくれればね」 (う゛っ……) ナルトは暫く心の中で葛藤した末、腹を決めてカカシを見上げる。 (父ちゃんに渡す時の予行練習だと思えばいいってばよ) そして、恥じらいつつ上目遣いでカカシを見つめながら、ナルトはそっとチョコレートを差し出した。 「せ…先生、大好きだってばよ……」 「俺もナルトのこと大好きだよv」 「うわ〜っ!!!」 ガバッと抱き締められ、ナルトは慌てて持っていた父親へのチョコレートをガードする。 「カカシ先生、何するんだってばよ!!」 ナルトが抵抗すると、カカシは「あ」と声を上げてナルトの身体を離した。 「悪い、悪い。ナルトが可愛かったもんで、ついなー」 笑って誤魔化そうとするカカシに、ナルトは目をつり上げて睨み付ける。 「先生、約束だってばよ。父ちゃん外に呼び出して来てくれよな!!」 危うく本来の目的であるチョコレートを壊されそうになったナルトは、原因であるカカシに腹を立てながら執務室がある方へ指さした。 「はいはい、解りましたよ。ナルト、チョコレートありがとね」 ナルトから貰ったチョコレートをヒラヒラさせると、追い立てられる形になったカカシはそれでもご機嫌な様子で約束通り四代目を呼びに向かっていった。
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