つれづれなるままに。
日々の戯れ言や小咄(書きかけ含む)、感想等々。
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2005/02/07(月) SS【バレンタイン・デー】その1

「あ、もうバレンタインシーズンだっけ」
 任務帰り、途中までだったら一緒に帰っても良いとナルトに許可をくれたサクラが、商店街に飾られているのぼりを見て声を上げる。
「サクラちゃん、俺にくれるってば?」
 自分を指さしながら期待を胸にナルトが尋ねれば、
「いいわよ。ただし、義理チョコだけどね♪」
 にっこり笑ったサクラに容赦のない言葉を返された。
「あ、そ…」
 ガクリと肩を落とすナルトを気に止める様子もなく、サクラは外から店内を覗く。
「ね、ナルト、ちょっと入っていかない?」
 店を指さし、サクラは何気ない調子でナルトを誘った。
「え? お、俺もだってば?」
 女の子の聖域とも言える場所に足を踏み入れる勇気は流石のナルトにも無く、サクラの誘いとはいえ腰が引けてしまう。
「いいじゃない。まだ時期的に早いから女の子少ないし、アンタと私だったらお姉さんの買い物に付き合う弟に見られるぐらいでしょ」
 それはそれで傷つく発言をされたナルトは、有無を言わさず腕を引っ張るサクラによって店内へと引きずり込まれた。
「お父さんには何あげよっかなー?」
 並べられているきらびやかな商品を楽しそうに見ながら、サクラが呟く。
「え? サクラちゃん、お父さんにもチョコあげるってば?」
 父親にまであげるとは思わず、ナルトが不思議そうに尋ねると、サクラは呆れた様子でナルトの目を覗き込んだ。
「あったりまえでしょ! いつもありがとうって感謝の気持ちを込めてあげるのよ。アンタにあげるよりよっぽど重要なんだから!」
 ナルトの胸を指先で刺しながら、サクラはその重要さを念押しをする。
「へ、へぇ〜……」
 ナルトはサクラの気迫に押されながら、そんな意味もあったのかと意外そうな表情を浮かべた。そして、チョコを選びに戻ったサクラに更に尋ねかける。
「ねぇねぇ、サクラちゃん、やっぱチョコ貰うとお父さん嬉しいってば?」
「可愛い娘からのプレゼントなんだから、嬉しいに決まってるでしょ」
 ナルトの質問に、チョコに目を向けたままのサクラはキッパリと答える。
「そういうもんなんだー」
 感心するなるとにサクラは向き直ると、腰に手を当てて溜息を吐き出した。
「…あのねぇ、ナルトは知らないかもしれないけど、元々バレンタイン・デーってお世話になっている人にありがとうって気持ちからプレゼントを贈る日なのよ」
「え? そうなの?」
 初めて知る事実に、ナルトの目が丸くなる。
 てっきり、女の子が好きな男の子にチョコレートを渡す日だと、ナルトは思いこんでいたのだ。
「そうなの」
 そんなナルトにサクラが畳みかけるように頷く。
「お菓子屋さんの商戦でちょっとイベントが変わっちゃったけどね」
 それでも自ら踊らされていることにサクラは異議はないらしい。
「だから、お父さんにあげなかったら意味がないのよ」
「……へぇ……」
 サクラの説明を聞きながら、ナルトは違うことを考え始めていた。
(父ちゃんにもやったら喜ぶかな?)
 当代の火影であるナルトの父親、四代目はナルトの憧れの存在でもある。誕生日や父の日にお祝いするのは当然のこと、出来るだけナルトは父親の喜ぶ姿が見たかった。
(サクラちゃんが教えてくれた通りなら、俺が父ちゃんにチョコレートを贈ってもおかしくないよな)
 贈ればきっと喜んでくれるに違いない。
(父ちゃんの喜ぶ顔見たいってばよ)
 大好きな父親が満面の笑みを浮かべてくれるその図を想像しただけでナルトの頬は緩んでくる。
 だが、如何せん、このイベントは女の子の為にあるようなもので、男である自分が参加するのは憚られた。
(チョコレート渡すのは良いけど、買いにくいってばよ……)
 こうして見るのに付き合うだけでも恥ずかしいのに、買うとなると相当の勇気が必要だろう。
「やっぱり今日買って行っちゃおうっかな?」
(!!)
 サクラがチョコレートを見ながら呟くのを耳にし、ナルトはピョコンと顔を上げた。
「ね、ねぇ、サクラちゃんっ!」
 サクラの服を、ナルトの手がクイッと引く。
「何よ?」
 物色していたのを邪魔されたサクラが不機嫌さを醸し出して振り向くと、ナルトが手を合わせて頭を下げていた。
「お願い、頼まれてくれない?」
「はぁ〜?」
 ナルトが急に何を言い出したいのか解らず、サクラは眉を顰める。
「チョコレート、一個一緒に買ってほしいってばよ」
「チョコレートって…一体何に使う気よ?」
 訝しげに尋ねるサクラに、ナルトは困ったような笑いを浮かべるとその耳に口を寄せて囁いた。
「……内緒だってばよ?」


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