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2005/02/17(木)
SSS『ちゅう2』(※サスナル風味)
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『ナルト君が熱を出してしまったので迎えに来てもらえますか?』 という内容の電話が火影執務室に入った直後、四代目火影は皆が留める暇もなく姿を消した。 「ナル君、大丈夫っ!?」 勢い込んで託児所に入れば、少し顔を赤くしたナルトが父親の姿を認めて微笑む。 「とーちゃ」 トトト…と駆け寄ってきたナルトを、四代目は腕を差し伸べて抱き上げた。 そして、コツンと額を合わせる。 「あ! 熱がある! ナル君、大丈夫なの?」 目の前で心配そうに眉を寄せる父親に、ナルトはにっこりと笑って、 「だぁじょぶ」 コックリと頷いた。 「熱はあるけど元気なんですよね」 苦笑しながらナルトの担任が付け足す。だが、元気でも37.5℃以上の熱が出たらうちに帰すのが決まりなのだ。 「四代目、申し訳ありませんがおうちに連れて帰って頂けますか?」 「解りました。じゃあ、ナル君荷物持って帰ろうね」 「やっ」 父親の言葉にナルトは首を振って嫌がる。そんなナルトに四代目はもう一度額を押しつけると、至近距離でジッと目を合わせた。 「これ以上熱が上がったら遊べなくなっちゃうよ。そうしたらナル君もイヤでしょ?」 諭され、ナルトの顔は段々と下向いていく。 「……うん」 子供ながらに仕方ないことに納得したらしい。ギュッとしがみつくナルトに四代目は愛おしげな笑みを向ける。 「元気になったら、また遊んでもらおうね。さ、荷物持っておいで」 四代目はナルトを床に下ろすと、その柔らかい金髪を撫で、荷物のある方へ指さした。 荷物は帰る用意をしていた保母により纏めてあって、ナルトはそれを小さな腕で受け取る。ナルトの後を追いかけてきた四代目はその荷物を受け取り、ナルトに上着を着させると、その手を引いて扉に向かった。 その扉の前に一人の子供が立ちはだかっている。 (あれは確かうちはの……) 子供ながらに要注意人物として四代目の心に刻まれている存在に、秀麗な眉が顰められる。 「しゃしゅけ」 「ナル君?」 サスケに気付いたナルトは繋いでいた四代目の手を振り解き、テテテとサスケに近寄っていった。そして、その肩に手を置いて軽く背伸びをすると、 「ちゅー」 そう言って、チュッと軽い音をさせると「えへへ」と笑いながらサスケから身を離す。 それを見ていた四代目はムンクの叫び状態で、声にならない叫びを放っていた。 「…………ななななななななナル君っ!? 何やってるのーーーっ!?」 慌てて我が子を引き寄せれば、ナルトは可愛く小首を傾げながら、やり遂げた笑みを零している。 「ちゅー。しないとかえっちゃダメだってばよ」 「せせせ先生っ!?」 ワケの解らない法則を言うナルトに、四代目は縋るような目を向けてナルトの担任に問い質した。 「最近流行ってるんですよねー」 二人の様子を微笑ましげに見守りながら、保母は簡単な説明を返す。 「本当は風邪とか移っちゃうと大変だから困ってるんですけどね。でも、サスケ君はナルト君としかしないし、ナルト君が他の子にしようとするとサスケ君が止めるんですよ。よっぽどナルト君のこと好きなんですね」 「そんなこと言ってないで止めて下さいよっ」 「でもねぇ…」 そう言って、彼女が辺りを見回すのを四代目も共に目を向ける。 そして目に映ったのはそこかしこでキスをしている園児の姿。 「……これを止めるのは無理ですよね?」 にっこりと笑顔を向けられて、四代目は力無く肩を落とした。 この分では自分の息子だけ守ってくれと言っても聞いてはもらえないだろう。 何よりもこれは子供のコミュニケーションなのだ。 そう自身に言い聞かせながら、それでも落ち込んだまま顔を上げた四代目の目に入ってきたのは、サスケからナルトにキスをしているという光景だった。 (う…うちはのガキがぁ…っ!!) ギリッと唇を噛みしめ、四代目は素早くサスケからナルトを奪う。 「ナル君、熱があるんだから帰らないとね」 押さえきれない怒りを滲ませつつ、それでも大人のプライドとして子供と張り合うような愚行は起こしてはいけないと四代目は必死に冷静を装ってナルトに告げた。 「じゃあね、サスケ君。ほら、ナル君もサスケ君にバイバイして」 完璧なまでの笑みを浮かべ、早く大事な息子を危険人物から遠ざけようと四代目はナルトを急かす。 「しゃしゅけ、またね」 「またな」 ナルトが手を振ると、サスケもまた素っ気ないながら頷いて応える。 その頬がうっすらと赤く染まっていたことを四代目が見逃すことはなかった。
「ナル君…ちゅうはやめなさいね」 道すがら、ナルトを抱き上げた四代目はこれ以上心臓に悪いことはやめてもらおうと、息子に言い聞かせる。 「ちゅう、めっ?」 小さな手を父親の肩に置いたナルトが覗き込むようにして聞き返すと、四代目はちょっとだけ怖い顔をして頷いた。 「ん。めっ、だよ?」 「…………」 ナルトは暫く考え込んだ後、四代目に顔を寄せるとチュッと口づけた。 「とーちゃにもめっ?」 泣きそうな顔で尋ねてくるナルトは可愛すぎて、四代目の腰は危うく砕け落ちそうになる。だが、ナルトを落としてはいけないと何とか気力で踏みとどまった。 「ぱ…パパにだけだったら良いかなー……」 頬を赤く染めつつ四代目が自分本位な答えを返すと、その目の前でナルトが満面の笑みを浮かべる。 「とーちゃ、ちゅー」 「うわっ、危ないよナル君っ」 早速キスしてくるナルトに、四代目は注意しながらも緩んだ顔を隠せない。幸せの独り占めに身も心も浮かれていた。
そうして後日、四代目は子供の記憶力と約束など儚いものだということをしみじみと痛感することになるのだった。
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