つれづれなるままに。
日々の戯れ言や小咄(書きかけ含む)、感想等々。
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2005/02/12(土) SS【バレンタイン・デー】その6

(うええええええっっ!?)
 突如抱き上げられて連れてこられたのは町の中心から少し離れた場所だった。
 ナルトを地上に降ろした四代目は、小さな笑みを浮かべながらナルトの顔を覗き込む。
「ビックリした?」
 問いかける優しい声に、ナルトは目を驚きに見開いたままコクコクと頷いた。心の中では声にならない叫びをあげながら。
(ビックリしたに決まってるってばよーっ!!!)
 まさか瞬身の術でこんな場所まで連れてこられるとは思っていなかったのだ。しかも、今まであの術で運ばれた経験などないのだから、興奮と驚きに声が出ないのも仕方のないことだろう。
「ごめんね、急に連れてきちゃって」
 あまり申し訳なさを感じさせない様子で四代目が謝ると、ナルトはブンブンと首を振り、
「それよりも、お仕事はいいんですか?」
 開口一番そんなことを尋ねた。いつも仕事に追われている父親を知っているだけに、そのことが一番気がかりだった。
「あ、うん。大丈夫だよ。有能な秘書を置いてきたことだしね」
 にっこりと笑ってそう告げるが、秘書がいくら有能でも、仕事を片づける張本人がいなくては意味がないのではないだろうか?
 そう思いながらナルトが大きな青い瞳でジッと見上げると、四代目は苦笑して肩を竦めた。
「本当に大丈夫だよ。それよりチョコレートの御礼も兼ねて好きな所へ連れて行ってあげるけど、どこがいい?」
「え…? 本当に?」
 ナルトは思わず素に戻って聞き返してしまう。忙しい父親と任務のある自分では時間の合う時が少なくて、こんな機会は滅多にない。だから、そんな言葉を聞いてしまうと、いけないと知りつつも心がぐらついた。
「ん。こんな可愛い子にチョコレート貰ったんだから、それぐらい当然でしょ」
 満面の笑みで頷く四代目に、ナルトの眉が疑わしげに寄せられる。
(…父ちゃんってば、いっつもこんな風に女の子誘ったりするのか?)
 嬉しい反面、不審に思わずにはいられない。
「ん? どうかした?」
「と……火影様って、いつもこんな風に女の子を誘うんですか?」
 堪らずに問えば、四代目は驚いたような表情を浮かべ、そして、即座に否定の言葉を口にした。
「ううん、そんなことないよ。え…っと、こんなこと言うと怒られちゃうかもしれないけど」
「?」
 少しだけ言い淀む四代目に首を傾げれば、苦笑いと共に答えが返ってくる。
「君、息子に似てるんだよね」
 向けられた台詞にナルトはドキッとした。
(こ…こーゆー風に言うってことは、バレてない…んだよな?)
「そ、そーなんですか?」
 表面上は乾いた笑いを浮かべたナルトだが、心の中は冷や汗でいっぱいだ。
「うん。だから、つい誘っちゃった」
 あっけらかんと告げる四代目に脱力感を感じ、ナルトの肩が落ちる。
(誘ったっていうか、アレってば拉致な気がすんだけど?)
 それでも自分に似ているから(本人だが)と思えば仕方ないことかもしれない。そんな曲がった答えが出てくるぐらいに、四代目の自分への親馬鹿ぶりを知っているナルトだった。
「もしも行きたい所がないんだったら、オレの行きたい所でもいい?」
「どこ…ですか?」
 父親の行きたいところが解らず、ナルトは首を傾げながら尋ねる。
「あそこ」
 四代目が指さした先にあるのは木ノ葉にただ一つ存在する遊園地だった。
「ゆー…えんち?」
 それを確認したナルトは呆然とした表情で呟く。
(…まさか最初からここが目当てでこの場所に移動してきたとか?)
 かなりの可能性でそれは考えられた。どんな場合に於いても、四代目の行動の先には必ず目的がある。ということは、ただ単に四代目自身が遊びたかっただけなのではないかと、ナルトは父親を疑いの眼差しで見つめた。
「ダメ?」
 ナルトの訝しげな視線にも負けず、四代目は困ったように笑みを浮かべてナルトに問いかける。それだけでナルトが白旗を揚げるには十分だった。
「ううん」
 ナルトが首を振ると、四代目は明るい笑みを浮かべる。それを見てナルトも微笑んだ。
「じゃあ、行こう」
 手を差し伸べられて、戸惑いながらもナルトはその手を掴む。
(今日だけは特別だってばよ)
 変化したままで父親を騙すのも、こうして二人でデートをするのも。
(カカシ先生、ごめんな)
 心の中でこの機会をくれた上司に謝ると、ナルトは四代目の手に引かれるまま園のゲートを潜っていった。


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