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2005/02/11(金)
SS【バレンタイン・デー】その5
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ナルトはカカシが父親を連れ出してくるのを木の陰でこっそりと待っていた。 (カカシ先生遅すぎるってばよ) なかなか現れずやきもきしていると、聞き馴染んだ声が向こうからやってくる。 (来た!) ナルトは四代目とカカシがすぐ側まで来ると、隠れていた場所から一気に飛び出した。 「火影様っ」 「へ?」 ナルトの気配に気付いていなかったらしく、突然の呼びかけにらしくもない間の抜けた声を発して、俯いていた顔を上げた。 「あ、あの、コレ、受け取って下さいっ」 いつもとは違う普通の女の子の口調でナルトは四代目にチョコレートを差し出す。 (うっわ! ドキドキするってばよ!) まるで本当に告白する少女のように(この場合はイタズラがバレるかバレないかというスリリングな状態な為だが)、ナルトの心臓は大きく脈打っていた。 そんなナルトの心情を知ってか知らずか、四代目は差し出されたチョコレートをジッと見つめているだけで何の反応も示さない。 (ば、バレたってば?) 何も口にしない父親にナルトは段々と心配になってくる。 「…………………………これを、オレに?」 長い沈黙の後、ようやく四代目はそう口にするとナルトからチョコレートを受け取った。 ──どうやら変化は見破られていないらしい。 ナルトは安心すると、うっすらと頬を染めながら頷く。 「はい」 しとやかな態度の裏で、ナルトは成功した計画に万歳三唱をしていた。 (さぁて、用も済んだことだし、さっさと逃げるってばよ) そう思って一歩足を動かそうとした時、四代目が不意にナルトから視線を外し、後ろにいたカカシを振り返った。 「ねぇ、カカシ君」 そう声を掛けた四代目に、訝しげな声と表情を隠しもしないカカシが返事を返す。 「……はい?」 そのカカシの反応にも気にすることなく四代目は柔らかな笑みを浮かべると、とんでもない爆弾発言を口にした。 「オレ、これからこの娘とデートしてくるから、あとお願いね」 (へっ?) 成り行きを見守っていたナルトの耳に思わぬ台詞が入ってくる。 そして、気付いた時には四代目に抱き上げられ、瞬身の術によってその場から姿を消すことになったのだった。
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