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2005/10/06(木)
SSS【愛しい愛しい愛しい君】
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「父ちゃん」
明るい金の髪を軽く跳ねさせながら、太陽のような少年が駆けてくる。 自分のことを呼びながら。
「ん、どうしたの?」
胸の中に飛び込んできた彼の、柔らかなその髪を撫でながら、彼の言葉を待つ。 彼が話すのはいつも他愛ない話。 新しい術を覚えたこと。ライバルでもある仲間との些細なケンカのこと。もう一人の仲間の可愛い女の子のこと。今日も遅刻してきた担当上忍のこと。
相づちを打ちながら、その表情を見遣る。 くるくると変わる万華鏡のようなその鮮やかな表情に、いつも、いつだって、目を奪われる。
自分を見上げる蒼い瞳。 澄んだ青空のようなその彩。
胸が痛い程、愛おしい色。
けれど、それらはすべて――自分の中の幻想。
彼岸の果てで見る夢。 なくしてしまった夢。
実際の自分には彼を抱きしめる腕など無くて。 かける声さえ無くて。
自分の大切なその存在は――お調子者だけど、明るくて、強くて、優しくて――だけど、なによりも、悲しみを堪える事をまず最初に覚えさせられて。
『ごめん…』
小さな手が、縋るものの無い手が、自身の胸を押さえて堪えるその姿が、泣き出せず食い縛るその唇が――無い胸を痛ませる。
『ごめん……ナルト』
繰り返す謝罪は虚空へ吸い込まれる。
許してくれなくていい。 許されるなんて思っていないから。
けれど、これだけは許してほしい。
君を想う気持ちだけは――どうしても止められないから。
愛しい、愛しい、愛しい――君。
-------------------------------------------- 『月の雫』をエンドレスで聴いていたらこんなことに…。 どこにいるのパパ。出来ればナルトの腹の中在中だと嬉しいけど、こんなことにもなってるかもしれないと、彼岸で我が子を想う父。 私の書く四代目は泣き虫率高いです。すみません。
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